2006年05月15日 第104号
Report
中心部をLRTで再生
新型路面電車
「まちづくり3法見直し」の流れを受け、各地域がコンパクトシティー実現へ向け独自のアプローチを始めようとしている。その中、新たな公共交通導入によるチャレンジにも注目が集まりつつある。郊外開発・立地を促した自動車とは異なる交通機能を形成し、町中の賑(にぎ)わいを取り戻す。そうした地方都市の中で「クルマ社会」づくりの優等生だった地域が、全国に先駆けて新たな公共交通を構築してしまった。富山市のLRT(新型路面電車)だ。
シリーズ「PPP時代の幕開け〜企業の挑戦〜B」
情報処理サービスで指定管理者をねらう ケー・デー・シー
情報処理サービスの潟Pー・デー・シー(東京都、高柳公康社長)は、ITによる労務の効率化や、利用者の利便性向上などを切り口に、指定管理者市場への参入をねらう。今のところ指定管理者に選定されている物件はないが、図書館や博物館などの管理・運営に関する実績は着実に増えており、今後、資料や図面、古書などをデータ化し管理するファイリングシステム、さらには派遣スタッフのオンラインによるサポート体制などを強みに、指定管理者制度を事業の中核に位置付けたい考えだ。
シリーズ「環境先進国ドイツ 省エネへの挑戦」
大学と企業の連携
環境先進国ドイツのまちづくりと省エネ建築を紹介する第3回目は、大学と中小企業が連携して、オリジナルの省エネ製品を生み出している事例を紹介する。ドイツの大学でも、日本と同じように、国からの補助に頼るのではなく、民間資金をいかに集めるかが課題となっている。一方、地元企業の中には、技術的な裏付けさえあれば、新たな製品を開発したいニーズがある。そのマッチング事例だ。
NEWS
大学発事業創出の研究開発
経済産業省の外郭団体であるNEDO技術開発機構は、18年度「大学発事業創出実用化研究開発事業」について、26件の助成を決めた。同事業は、大学などにおける研究成果の技術移転による事業化を促し、新たな産業や雇用を創出することが目的。
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LRTは公設民営、上下一体方式
路面電車のストック背景に短期間で実現
富山港線路面電車(LRT)化事業の全体事業費は58億円。「公設民営」の考え方を導入した同事業は、イニシャルコストにあたる58億円の100%を市が賄い(補助)、3セク会社は運営に徹する。事業収入で人件費などのランニングコストを相殺する形だ。ただ軌道レール・車両などの所有権は3セクが保持するため(上下一体方式)、維持修繕が発生するが、この部分に対しても市が100%支援する。それでも当面、事業採算性をクリアすることは難しいという。
事業の中では同時に、市が主体となり、沿線地区のまちづくりにも力を入れる。駅アクセス改善(駅前広場・自転車駐輪場・アクセス道路整備や、駅と周辺地域を結ぶバスの導入)、駅周辺住宅の促進(高齢者向け住宅誘致や土地区画整理事業の促進)、魅力あるまちづくり促進(古い町並みの保存・活用)などだ。
事業は15年5月に森雅志市長が「富山港線を路面電車化する」と宣言しスタートした。
市都市整備部次長で交通政策課長の粟島康夫氏は「全国で多くの都市がLRTの検討をしている中で市長が宣言し、わずか3年足らずで整備が完了したのは、画期的なことだと考えている。市長のリーダーシップがあったためだ」と指摘する。
富山市はJR駅南側で今も路面電車が走り、また「クルマ社会」において全国の中でも優等生といわれる交通政策を展開してきた。ハード・ソフトのストックを背景に、全国に先駆けたLRTの実現を可能にした、と考えることができる。
駅南側の路面電車は約6・4q、地元企業である富山地方鉄道梶i桑名博勝社長、富山市)が経営し、しかも黒字を実現しているという。沿線に富山大学・高校があり、同学生含め1日1万1000人の利用者を確保できる。
一方、「クルマ社会」の優等生といわれる富山市のデータを見ると、道路整備率が70・2%で全国1位(13年4月1日現在)、乗用車保有状況は1世帯当たり1・71台で全国2位(15年3月末現在)、などとなっている。
現存するストック(路面電車)、交通政策のハウツーなどをいかんなく発揮した結果が、新型路面電車を短期間に完成に導いた。
都心人口密度は全国最低に
新幹線開業後に採算性確保
市都市計画課課長の村藤昇氏は「今回のLRTも含め、新たな交通政策は、市中心部への一極集中を促すものではなく、これまでの施策で郊外に分散した各拠点などを連携しネットワークを結ぶという、クラスター型のまちづくりを支援するものだ」と説明する。
「クルマ社会」をテーマとした市のこれまでの政策の結果、郊外居住が進み「都心人口密度は全国の県庁所在都市の中でも最低となってしまった」(村藤課長)。バスなど公共交通機関の利用者も激減し、そこに輪をかけて高齢化が押し寄せた(中核市の中のワースト8位、17年4月1日現在)。モータリゼーションを全国どこの都市よりも加速させた当然の帰結だった。
都心人口の減少、公共交通利用者の激減、高齢化、こうした課題に市は、どう対処したのか?中心部などに残っていた「鉄軌道」のストックを再利用するなど、公共交通を再生しクラスター型のまちづくりを図ることだった。
富山市は「クルマ社会」の優等生でありながら、同時に鉄軌道が全国の同規模・同環境の都市の中では最も多く残っている。これを活用、まずは中心市街地の再生を図ることを考えた。
そうした中、富山湾線(通常の電車が走っていた)の問題が浮上した。きっかけは新幹線の平成26年度開通を見越した連続立体交差事業(事業主体は富山県)の計画だった。同事業により新幹線と並行する区間の湾線を高架化するかどうかの選択が事業主体(JR西日本)に迫られた。しかし当時、同鉄道の利用者は25%もダウンしていた(平成14年時点、平成7年対比)。結論は高架をやめ路面電車として、事業主体は市を中心とした3セクに移行する、というものだった。
森市長は15年5月、湾線を路面電車(LRT)化しようと宣言、新湾線の事業が始まった。
新湾線のLRT事業は新幹線が開業する27年3月以降、南側を走る路面電車との接続を計画している。接続部分をだれが、どうやるかは今後の課題としている。
駅南側でも17年度から路面電車の環状線化の検討を始めている。富山大学から南富山までの区間6・4qの中心部0・9q部分を接続するもので、これまで2ルート案が浮上している。今後、地域住民などの意見を聞きながら、研究を深めていく。
こうして新幹線開業後は北の7・6qと南の7・3qの延長合計14・9qといったLRT・路面電車のネットワークが完成する予定だ。この段階で富山ライトレール鰍ヘ採算が取れる試算となっている(表)。
都市内公共交通の整備や、セットで行うまちづくりにより、中心市街地を再生していく。セット事業の中では、まちなか居住施策などがある。同施策では新幹線が開業される平成26年度までの10年間で6600人を増やす目標を定めている。
中心部再生と同時に旧市の郊外各拠点や合併後(17年4月1市4町2村で合併)の旧町村間とのネットワークを公共交通の再活用により結び、活性化を図っていく。同交通は、JR高山線、富山地方鉄道梶Aさらにはバスなどで、運行頻度の向上を進めつつあるところだ。
LRT事業、路面電車の環状線化、公共交通のソフト対策、関連事業により、定住・交流人口の増加を図り、町中に賑わいを戻し、さらには市全体のまちづくりを戦略的に展開していく。交通を切り口とした同市の取り組みに注目していきたい。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年05月15日
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