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2006年05月25日
第105号
Report
林業再生の糸口を探る
環境配慮で合理化経営(速水林業)
林業の衰退が続く。木材の価格は20〜30年前に比べ半分以下となり、林業経営者は減少の一途をたどる。一方、二酸化炭素の吸収、水源のかん養、土砂災害の防止など、森林の多様な機能が見直され、森林への期待は高まっている。こうした中、徹底した経営の合理化により大規模な森林を、環境に配慮しながら健全に育て続けている会社がある。尾鷲ヒノキの産地で有名な三重県紀北町(旧海山町)の速水林業だ。2000年には、こうした取り組みが世界から認められた。環境に配慮した森林管理の国際認証「FSC」を国内で初めて取得したのだ。同社の取り組みから、日本の林業再生の糸口を探った。
広葉樹推進でほんとうにいいのか
「広葉樹も、植えたら人工林です。広葉樹を植えたからといって天然林になるわけではありません。その結果がどうなるかはわからないし、どこかで手がかかるかもしれません。何も技術的な裏付けがないわけですから。それに、広葉樹であるコナラの20年生を間伐してお金が入りますか、50年、80年でお金が入りますか? そこに経済的インセンティブはゼロなわけです」。
速水林業の代表、速水亨氏は、闇雲に広葉樹が良いとされる地方の政策に警笛を鳴らす。森林政策に欠けているものは、求められるものは何か――。
検証
ガス民営化1年
販売量が10%も伸びた
「目的は県民益、民営化はそのための手段」―。
この考え方を実現するため「事業計画をチェックできる(民営化の)受け皿会社を新たにつくり、公募により選定」という独自の仕組みを構築した長野県ガス事業の民営化。平成16年に行った選定の結果誕生した民営化会社、長野都市ガス梶i茂木通則社長、長野市)が事業を開始してから1年を迎えた。事業は順調なのか?県民・顧客益はクリアできているのか?同社の茂木社長にインタビューした。
シリーズ環境先進国ドイツの省エネへの挑戦(最終回)
産学官連携で2000の仕事創出
環境先進国ドイツのまちづくりと省エネ建築を紹介するシリーズ最終回は、産学官連携によるプロジェクトを紹介する。東西ドイツの統合後、ドイツ国内では失業率が10%を超える大不況に見舞われた。その解決に向けた産学官連携の取り組みが、雇用の創出だけでなく、結果として環境技術の集積を生み出した。
インタビュー
横浜国大・小林重敬教授
「まち3法見直し」のエッセンスは?
「まちづくり3法見直し」の流れの原点となった社会資本整備審議会(国土交通大臣の諮問機関)都市計画部会などでの学識経験者による検討をまとめた横浜国立大学の小林重敬教授にインタビューした。
第9回地域再生まちづくり勉強会
ファンドで場所文化の創造を
内閣府とまちづくり新聞は4月20日、東京都内で第9回地域再生まちづくり勉強会を開いた。「場所文化の創造と地域活性化」をテーマに、任意組織・場所文化フォーラムメンバーの吉澤保幸氏(鰍メあ取締役)、後藤健市氏(北海道点字図書館副館長)から話を聞いた。
林業再生の糸口
環境配慮で合理化経営
「私のやっていることは、売り上げを伸ばすビジネスモデルではありません。ビジネスを求めるなら、山を売り払って、もっと投資効果の高いことをします。林業が好きなだけです。ただし、林業を続けられる努力はしています」。
速水林業代表の速水亨氏は、売り上げを追求する企業理念とは、まったく異なる価値観を示す。
木材価格は20〜30年前に比べて半分以下にまで落ち込んだ。かつて3億円近くあった同社の売り上げも、2億弱にまで減少した。
そうした中でも、徹底した経営の合理化により、消えかかる林業に火をともし続けてきた。
「今までと同じことをやっても(経営が)成り立たないことは確かです」(速水氏)。
速水林業では、原則として、自社が所有する森林の1年間の成長量約4000?を、伐採量が上回らないことを経営方針におく。それ以上の伐採は、将来的に、「ツケ」となるからだ。
したがって、収益を一気に高めることはできない。しかし、速水氏は、こうした環境への配慮は、必ずしも経営と対峙するものではないと指摘する。
例えば、同社では、林業では常識とされる「下草刈」(※)という作業を環境配慮の視点から見直した結果、基本的に行わないで必要なところだけ刈る方法へ切り替えた。
そのほうが、環境的に植物の多様性が確保できるし、経営的にも合理化が図れるためだ(詳細2面)。
「今まで気付かなかったことが、環境配慮という新しい視点を加えることで見えてくるのです」と速水氏は語る。
同社は、最も重要な理念に、ドイツの林学者アルフレート・メーラー(1860年〜1922年)の言葉を掲げる。『最も美しい森林は最も収穫多き森林でもある』。
世界から認められた森林
環境配慮の企業理念にもとづいて管理された森林は、世界からも認められている。
2000年には、国際的な森林管理の認証である「FSC」を国内で初めて取得した。
速水林業の山から搬出された木材は、地域の製材工場や工務店で加工され、FSCのマークをつけて市場に出される。世界的に環境への配慮が求められる中、大手企業などからの引き合いが増えているという。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年05月25日 | コメント (0) | トラックバック
2006年05月15日
第104号
Report
中心部をLRTで再生
新型路面電車
「まちづくり3法見直し」の流れを受け、各地域がコンパクトシティー実現へ向け独自のアプローチを始めようとしている。その中、新たな公共交通導入によるチャレンジにも注目が集まりつつある。郊外開発・立地を促した自動車とは異なる交通機能を形成し、町中の賑(にぎ)わいを取り戻す。そうした地方都市の中で「クルマ社会」づくりの優等生だった地域が、全国に先駆けて新たな公共交通を構築してしまった。富山市のLRT(新型路面電車)だ。
シリーズ「PPP時代の幕開け〜企業の挑戦〜B」
情報処理サービスで指定管理者をねらう ケー・デー・シー
情報処理サービスの潟Pー・デー・シー(東京都、高柳公康社長)は、ITによる労務の効率化や、利用者の利便性向上などを切り口に、指定管理者市場への参入をねらう。今のところ指定管理者に選定されている物件はないが、図書館や博物館などの管理・運営に関する実績は着実に増えており、今後、資料や図面、古書などをデータ化し管理するファイリングシステム、さらには派遣スタッフのオンラインによるサポート体制などを強みに、指定管理者制度を事業の中核に位置付けたい考えだ。
シリーズ「環境先進国ドイツ 省エネへの挑戦」
大学と企業の連携
環境先進国ドイツのまちづくりと省エネ建築を紹介する第3回目は、大学と中小企業が連携して、オリジナルの省エネ製品を生み出している事例を紹介する。ドイツの大学でも、日本と同じように、国からの補助に頼るのではなく、民間資金をいかに集めるかが課題となっている。一方、地元企業の中には、技術的な裏付けさえあれば、新たな製品を開発したいニーズがある。そのマッチング事例だ。
NEWS
大学発事業創出の研究開発
経済産業省の外郭団体であるNEDO技術開発機構は、18年度「大学発事業創出実用化研究開発事業」について、26件の助成を決めた。同事業は、大学などにおける研究成果の技術移転による事業化を促し、新たな産業や雇用を創出することが目的。
LRTは公設民営、上下一体方式
路面電車のストック背景に短期間で実現
富山港線路面電車(LRT)化事業の全体事業費は58億円。「公設民営」の考え方を導入した同事業は、イニシャルコストにあたる58億円の100%を市が賄い(補助)、3セク会社は運営に徹する。事業収入で人件費などのランニングコストを相殺する形だ。ただ軌道レール・車両などの所有権は3セクが保持するため(上下一体方式)、維持修繕が発生するが、この部分に対しても市が100%支援する。それでも当面、事業採算性をクリアすることは難しいという。
事業の中では同時に、市が主体となり、沿線地区のまちづくりにも力を入れる。駅アクセス改善(駅前広場・自転車駐輪場・アクセス道路整備や、駅と周辺地域を結ぶバスの導入)、駅周辺住宅の促進(高齢者向け住宅誘致や土地区画整理事業の促進)、魅力あるまちづくり促進(古い町並みの保存・活用)などだ。
事業は15年5月に森雅志市長が「富山港線を路面電車化する」と宣言しスタートした。
市都市整備部次長で交通政策課長の粟島康夫氏は「全国で多くの都市がLRTの検討をしている中で市長が宣言し、わずか3年足らずで整備が完了したのは、画期的なことだと考えている。市長のリーダーシップがあったためだ」と指摘する。
富山市はJR駅南側で今も路面電車が走り、また「クルマ社会」において全国の中でも優等生といわれる交通政策を展開してきた。ハード・ソフトのストックを背景に、全国に先駆けたLRTの実現を可能にした、と考えることができる。
駅南側の路面電車は約6・4q、地元企業である富山地方鉄道梶i桑名博勝社長、富山市)が経営し、しかも黒字を実現しているという。沿線に富山大学・高校があり、同学生含め1日1万1000人の利用者を確保できる。
一方、「クルマ社会」の優等生といわれる富山市のデータを見ると、道路整備率が70・2%で全国1位(13年4月1日現在)、乗用車保有状況は1世帯当たり1・71台で全国2位(15年3月末現在)、などとなっている。
現存するストック(路面電車)、交通政策のハウツーなどをいかんなく発揮した結果が、新型路面電車を短期間に完成に導いた。
都心人口密度は全国最低に
新幹線開業後に採算性確保
市都市計画課課長の村藤昇氏は「今回のLRTも含め、新たな交通政策は、市中心部への一極集中を促すものではなく、これまでの施策で郊外に分散した各拠点などを連携しネットワークを結ぶという、クラスター型のまちづくりを支援するものだ」と説明する。
「クルマ社会」をテーマとした市のこれまでの政策の結果、郊外居住が進み「都心人口密度は全国の県庁所在都市の中でも最低となってしまった」(村藤課長)。バスなど公共交通機関の利用者も激減し、そこに輪をかけて高齢化が押し寄せた(中核市の中のワースト8位、17年4月1日現在)。モータリゼーションを全国どこの都市よりも加速させた当然の帰結だった。
都心人口の減少、公共交通利用者の激減、高齢化、こうした課題に市は、どう対処したのか?中心部などに残っていた「鉄軌道」のストックを再利用するなど、公共交通を再生しクラスター型のまちづくりを図ることだった。
富山市は「クルマ社会」の優等生でありながら、同時に鉄軌道が全国の同規模・同環境の都市の中では最も多く残っている。これを活用、まずは中心市街地の再生を図ることを考えた。
そうした中、富山湾線(通常の電車が走っていた)の問題が浮上した。きっかけは新幹線の平成26年度開通を見越した連続立体交差事業(事業主体は富山県)の計画だった。同事業により新幹線と並行する区間の湾線を高架化するかどうかの選択が事業主体(JR西日本)に迫られた。しかし当時、同鉄道の利用者は25%もダウンしていた(平成14年時点、平成7年対比)。結論は高架をやめ路面電車として、事業主体は市を中心とした3セクに移行する、というものだった。
森市長は15年5月、湾線を路面電車(LRT)化しようと宣言、新湾線の事業が始まった。
新湾線のLRT事業は新幹線が開業する27年3月以降、南側を走る路面電車との接続を計画している。接続部分をだれが、どうやるかは今後の課題としている。
駅南側でも17年度から路面電車の環状線化の検討を始めている。富山大学から南富山までの区間6・4qの中心部0・9q部分を接続するもので、これまで2ルート案が浮上している。今後、地域住民などの意見を聞きながら、研究を深めていく。
こうして新幹線開業後は北の7・6qと南の7・3qの延長合計14・9qといったLRT・路面電車のネットワークが完成する予定だ。この段階で富山ライトレール鰍ヘ採算が取れる試算となっている(表)。
都市内公共交通の整備や、セットで行うまちづくりにより、中心市街地を再生していく。セット事業の中では、まちなか居住施策などがある。同施策では新幹線が開業される平成26年度までの10年間で6600人を増やす目標を定めている。
中心部再生と同時に旧市の郊外各拠点や合併後(17年4月1市4町2村で合併)の旧町村間とのネットワークを公共交通の再活用により結び、活性化を図っていく。同交通は、JR高山線、富山地方鉄道梶Aさらにはバスなどで、運行頻度の向上を進めつつあるところだ。
LRT事業、路面電車の環状線化、公共交通のソフト対策、関連事業により、定住・交流人口の増加を図り、町中に賑わいを戻し、さらには市全体のまちづくりを戦略的に展開していく。交通を切り口とした同市の取り組みに注目していきたい。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年05月15日 | コメント (0) | トラックバック
2006年05月05日
第103号
Report
地域ブランド戦略第2弾
美味しさはITで見せろ
地域名と商品名を組み合わせた、いわゆる地域ブランド商標の認定要件を緩和した改正商標法が4月1日から施行され、特許庁に対し同月10日までに324件の出願があるなど、地域ブランドへの関心が高まっている。しかし、大前提となる品質や味の確保、他産品との差別化による市場の独占、消費者の信頼獲得など、本当の意味でのブランド化を達成するのは容易ではない。埼玉県本庄市では、ITを活用して産品のおいしさや安全・安心さを、文字や数値、色などの「情報」として消費者へ伝える試みが始まっている。新しい地域ブランド確立への動きを追った。
野菜が「情報」を持つ
本庄PF研究会
埼玉県熊谷市にある老舗デパート「八木橋」の生鮮野菜売り場に、生産者の顔写真と名前、二次元コード入りのシールが貼られた野菜が並ぶ棚がある。本庄市で「精密農法」に取り組む若手集団「本庄PF(Precision Farming=精密農法)研究会」がつくる「本庄トキメキ野菜」のために設けられたこだわりコーナーだ。精密農法とは、センサー技術などを活用して土壌の状態や作物の生育状況を診断し、そのデータにもとづいて施肥や農薬の量を管理・調整する新しい営農戦略の考え方。過大な施肥による環境負荷を抑えるほか、農薬の低減、労力の効率化などにつながるとして、注目されている。野菜に張られている二次元コードを携帯電話で撮影すると、どこでどのように栽培されたかなどの情報が見られる。
NEWS
市場化テストに7.8兆円の市場あり
三菱総合研究所は、今国会に提出されている「公共サービス効率化法(市場化テスト法)」などにより、今後、官から民にアウトソーシングされる人件費の市場規模が国と地方を合わせて7兆8000億円になるとの試算をまとめた。市場化テストなどで、将来的に民間参入によって削減可能な公務員の数をはじき出し、それに人件費を掛けあわせて算出したもの。
経済産業省 中心市街地の商業活性化を支援
経済産業省はこのほど、18年度戦略的中心市街地商業活性化支援事業の補助金交付先について信越放送(長野市)など8件を採択した。民間活力を生かし中心市街地の活性化を狙うもので、今年度は34億5000万円が予算化されている。
ここにスポット
無料交流バスが飛び地合併を解消した
高崎市
複数の飛び地合併を抱える高崎市で、地域住民同士の交流を狙った無料交流バスが、飛び地の1つを解消しようとしている。運賃が格安で利便性の高いバスが、飛び地の間となっている町を一切停車せずに素通りしたことが、自立を掲げていた町長へのリコール運動へとつながったのだ。
シリーズ環境先進国ドイツの省エネへの挑戦A
太陽光や地熱を生かしたぬくもりの生活
環境先進国ドイツのまちづくりと省エネ建築を紹介する第2回目は、太陽光や地熱など自然エネルギーを活用することで冷暖房をほとんど使わない省エネ住宅団地をレポート。幼稚園や、住宅の建設現場の様子、さらには省エネ化によって、どうしても割高になってしまう建設コストの負担をいかに軽減させているかを報告する。
新たな地域活性化 農業にIT雇用が生まれる
本庄PF研究会を技術的にサポートする東京農工大の澁澤栄教授はITによる地域ブランドの創出についてこう説明する。 「店頭には国境がない。輸入品もあれば、有機野菜や地場野菜もある。その中で営業力もブランド力もない小規模農家が作った野菜が残ることは難しい。しかし、逆に消費者から認められれば、同じ店頭でも他の野菜より高く売ることもできる。例えば、1個80円のトマトの隣で、1個160円のトマトが売られていても、消費者が求めるものなら売れる。消費者の期待とニーズに答えられるツールがITだ」。 本庄PF研究会では、携帯電話メーカーが二次元コードのサービスを開始した、その日のうちに、二次元コードから生産者のホームページ(HP)へアクセスできるシステムを立ち上げた。HPでは、生産者によって作業日誌が毎日のように書き換えられていて、いつ、どのくらい肥料や農薬を散布したかなどがわかる仕組みになっている。
二次元コードに消費者はどのくらい感心を示すのか―。 本庄PF研究会では、顧客からのヒアリング調査も実施。その結果、生産者の顔写真を入れると消費者が安心すること、最も感心を示すのが鮮度であること、インターネットにはそれほど感心を示さないが二次元コードがあることで信頼感が得られること――などがわかったという。 生産者がパソコンを扱えるよう、講習会も開いた。会員の一人、戸塚貞男さんは「メールぐらいならそれまでも普通に使っていましたし、ホームページ更新といってもブログ(日記風ホームページ)のように簡単なものです」と話す。
研究会では今後、野菜の風味を、色や形で表現することも検討している。澁澤教授は「一般の野菜の風味は、甘さがどのくらいで辛さがどのくらい。それに比べて本庄の野菜は甘さがこのくらいで、辛さがこのくらいということを、見てわかるようにしたい」と戦略の一部をほのめかす。 ITを使ったからといって、野菜の品質が上がるわけではない。しかし、本庄PF研究会の宮崎広之さんは「肥沃な大地や恵まれた気象条件などによって生み出された野菜の価値を、確かな情報として消費者に伝えることができれば、地場産品のブランド力を高めることができる」と自らの考えを語る。 熊谷市の老舗デパート八木橋では、本庄トキメキ野菜が売れていることで、本庄の名がつく野菜全体の評判がよくなっているようだ。宮崎さんは「地域全体の野菜のイメージが上がらなくては、地域ブランドは確立できない。仮に今、自分の野菜が少し売れたとしても次の世代までは続かない」と語る。 本庄PF研究会のメンバーは現在13人。平均年齢は30歳後半で、ほとんどが農家の2代目、3代目だ。 本庄市は今、早稲田大学の研究施設(早稲田リサーチパーク)が誕生するなど、産学官連携の気運が各分野で高まっている。 新しい農業の取り組みで地域活性化を目指す若手農業集団は、その中心的な存在になっている。
これが精密農法だ
本庄PF研究会が目指す『精密農法』はどのようなものか、それにより農業は、地域はどう変わるのか――。 澁澤教授は、センサー技術などを駆使したほ場マッピング、データに合わせて農薬や施肥料の調整を行う可変作業、そして栽培作物や農作業の行動を決める意思決定支援システムの3要素の技術導入により、農業は革命ともいえるほどの変化をむかえることになると指摘する。 例えば、ほ場の、ある部分で病害虫が発生したら、それを駆除するのに、どこに、どのくらい、どんな農薬を、どんな手法で散布すればいいのか、が即時に判断できる時代になるというのだ。 しかし、一筆10アールという小さなほ場が集まり、そこに多数の耕作者が入り混じる日本の営農スタイルでは、こうしたプロセスは、かなり複雑となる。 そこで、各地域ごとに精密農業を導入する農家の集まり「知的営農集団」を立ち上げ、それとは別に、精密農業の技術をサポートする「技術プラットホーム」をつくることが重要になると、澁澤教授は強調する。
技術プラットホームには、IT企業はもちろん、小売業者や製造業が参画する。第3セクターや、ベンチャー企業の形態で各地域の農場を分析したり、生育状況を調べ、データを知的農業集団に提供する。知的農業集団は、データにもとづいて、効率的に作業を行う。 農業とITとの融合により、これまで田舎に帰っても働く場がなかった若者の雇用問題にも明るさがもたらされる。 澁澤教授は精密農業の推進によって、農薬や施肥の無駄が省けるため、こうした企業が活躍できる市場は十分に生まれるはずだと推測する。 さらに、精密農法によって生まれた「情報付きのほ場」と「情報付き農産物」は、農と食の距離を縮め、消費者と農業生産者の信頼関係をも構築する。
野菜が広告媒体になる?
本庄PF研究会では、自分たちがつくる「本庄トキメキ野菜」のブランド保護のために、二次元コードを利用した農産物の情報共有化の仕組みをビジネスモデル特許として申請している。 「地名と商品名」だけで商標登録するのではなく、販売方法、さらには栽培方法に関わる特許取得も目指し、特産品である本庄トキメキ野菜を知的財産として保護していきたい考えだ。 野菜に張られた二次元コードの下には、「JA埼玉ひびきの」「ニレコ」「リンテック」という団体・企業名が入っている。 別に、これらの団体・企業が野菜をつくっているわけではない。本庄PF研究会がつくる安全・安心、美味しいという確かな情報を、広告媒体として利用しているのだ。 ITによる地域ブランドの確立は、その商品だけでなく、地域全体の情報発信のあり方にも、新たな可能性をもたらしそうだ。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年05月05日 | コメント (0) | トラックバック
