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2006年05月05日 第103号
Report
地域ブランド戦略第2弾
美味しさはITで見せろ
地域名と商品名を組み合わせた、いわゆる地域ブランド商標の認定要件を緩和した改正商標法が4月1日から施行され、特許庁に対し同月10日までに324件の出願があるなど、地域ブランドへの関心が高まっている。しかし、大前提となる品質や味の確保、他産品との差別化による市場の独占、消費者の信頼獲得など、本当の意味でのブランド化を達成するのは容易ではない。埼玉県本庄市では、ITを活用して産品のおいしさや安全・安心さを、文字や数値、色などの「情報」として消費者へ伝える試みが始まっている。新しい地域ブランド確立への動きを追った。
野菜が「情報」を持つ
本庄PF研究会
埼玉県熊谷市にある老舗デパート「八木橋」の生鮮野菜売り場に、生産者の顔写真と名前、二次元コード入りのシールが貼られた野菜が並ぶ棚がある。本庄市で「精密農法」に取り組む若手集団「本庄PF(Precision Farming=精密農法)研究会」がつくる「本庄トキメキ野菜」のために設けられたこだわりコーナーだ。精密農法とは、センサー技術などを活用して土壌の状態や作物の生育状況を診断し、そのデータにもとづいて施肥や農薬の量を管理・調整する新しい営農戦略の考え方。過大な施肥による環境負荷を抑えるほか、農薬の低減、労力の効率化などにつながるとして、注目されている。野菜に張られている二次元コードを携帯電話で撮影すると、どこでどのように栽培されたかなどの情報が見られる。
NEWS
市場化テストに7.8兆円の市場あり
三菱総合研究所は、今国会に提出されている「公共サービス効率化法(市場化テスト法)」などにより、今後、官から民にアウトソーシングされる人件費の市場規模が国と地方を合わせて7兆8000億円になるとの試算をまとめた。市場化テストなどで、将来的に民間参入によって削減可能な公務員の数をはじき出し、それに人件費を掛けあわせて算出したもの。
経済産業省 中心市街地の商業活性化を支援
経済産業省はこのほど、18年度戦略的中心市街地商業活性化支援事業の補助金交付先について信越放送(長野市)など8件を採択した。民間活力を生かし中心市街地の活性化を狙うもので、今年度は34億5000万円が予算化されている。
ここにスポット
無料交流バスが飛び地合併を解消した
高崎市
複数の飛び地合併を抱える高崎市で、地域住民同士の交流を狙った無料交流バスが、飛び地の1つを解消しようとしている。運賃が格安で利便性の高いバスが、飛び地の間となっている町を一切停車せずに素通りしたことが、自立を掲げていた町長へのリコール運動へとつながったのだ。
シリーズ環境先進国ドイツの省エネへの挑戦A
太陽光や地熱を生かしたぬくもりの生活
環境先進国ドイツのまちづくりと省エネ建築を紹介する第2回目は、太陽光や地熱など自然エネルギーを活用することで冷暖房をほとんど使わない省エネ住宅団地をレポート。幼稚園や、住宅の建設現場の様子、さらには省エネ化によって、どうしても割高になってしまう建設コストの負担をいかに軽減させているかを報告する。
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新たな地域活性化 農業にIT雇用が生まれる
本庄PF研究会を技術的にサポートする東京農工大の澁澤栄教授はITによる地域ブランドの創出についてこう説明する。 「店頭には国境がない。輸入品もあれば、有機野菜や地場野菜もある。その中で営業力もブランド力もない小規模農家が作った野菜が残ることは難しい。しかし、逆に消費者から認められれば、同じ店頭でも他の野菜より高く売ることもできる。例えば、1個80円のトマトの隣で、1個160円のトマトが売られていても、消費者が求めるものなら売れる。消費者の期待とニーズに答えられるツールがITだ」。 本庄PF研究会では、携帯電話メーカーが二次元コードのサービスを開始した、その日のうちに、二次元コードから生産者のホームページ(HP)へアクセスできるシステムを立ち上げた。HPでは、生産者によって作業日誌が毎日のように書き換えられていて、いつ、どのくらい肥料や農薬を散布したかなどがわかる仕組みになっている。
二次元コードに消費者はどのくらい感心を示すのか―。 本庄PF研究会では、顧客からのヒアリング調査も実施。その結果、生産者の顔写真を入れると消費者が安心すること、最も感心を示すのが鮮度であること、インターネットにはそれほど感心を示さないが二次元コードがあることで信頼感が得られること――などがわかったという。 生産者がパソコンを扱えるよう、講習会も開いた。会員の一人、戸塚貞男さんは「メールぐらいならそれまでも普通に使っていましたし、ホームページ更新といってもブログ(日記風ホームページ)のように簡単なものです」と話す。
研究会では今後、野菜の風味を、色や形で表現することも検討している。澁澤教授は「一般の野菜の風味は、甘さがどのくらいで辛さがどのくらい。それに比べて本庄の野菜は甘さがこのくらいで、辛さがこのくらいということを、見てわかるようにしたい」と戦略の一部をほのめかす。 ITを使ったからといって、野菜の品質が上がるわけではない。しかし、本庄PF研究会の宮崎広之さんは「肥沃な大地や恵まれた気象条件などによって生み出された野菜の価値を、確かな情報として消費者に伝えることができれば、地場産品のブランド力を高めることができる」と自らの考えを語る。 熊谷市の老舗デパート八木橋では、本庄トキメキ野菜が売れていることで、本庄の名がつく野菜全体の評判がよくなっているようだ。宮崎さんは「地域全体の野菜のイメージが上がらなくては、地域ブランドは確立できない。仮に今、自分の野菜が少し売れたとしても次の世代までは続かない」と語る。 本庄PF研究会のメンバーは現在13人。平均年齢は30歳後半で、ほとんどが農家の2代目、3代目だ。 本庄市は今、早稲田大学の研究施設(早稲田リサーチパーク)が誕生するなど、産学官連携の気運が各分野で高まっている。 新しい農業の取り組みで地域活性化を目指す若手農業集団は、その中心的な存在になっている。
これが精密農法だ
本庄PF研究会が目指す『精密農法』はどのようなものか、それにより農業は、地域はどう変わるのか――。 澁澤教授は、センサー技術などを駆使したほ場マッピング、データに合わせて農薬や施肥料の調整を行う可変作業、そして栽培作物や農作業の行動を決める意思決定支援システムの3要素の技術導入により、農業は革命ともいえるほどの変化をむかえることになると指摘する。 例えば、ほ場の、ある部分で病害虫が発生したら、それを駆除するのに、どこに、どのくらい、どんな農薬を、どんな手法で散布すればいいのか、が即時に判断できる時代になるというのだ。 しかし、一筆10アールという小さなほ場が集まり、そこに多数の耕作者が入り混じる日本の営農スタイルでは、こうしたプロセスは、かなり複雑となる。 そこで、各地域ごとに精密農業を導入する農家の集まり「知的営農集団」を立ち上げ、それとは別に、精密農業の技術をサポートする「技術プラットホーム」をつくることが重要になると、澁澤教授は強調する。
技術プラットホームには、IT企業はもちろん、小売業者や製造業が参画する。第3セクターや、ベンチャー企業の形態で各地域の農場を分析したり、生育状況を調べ、データを知的農業集団に提供する。知的農業集団は、データにもとづいて、効率的に作業を行う。 農業とITとの融合により、これまで田舎に帰っても働く場がなかった若者の雇用問題にも明るさがもたらされる。 澁澤教授は精密農業の推進によって、農薬や施肥の無駄が省けるため、こうした企業が活躍できる市場は十分に生まれるはずだと推測する。 さらに、精密農法によって生まれた「情報付きのほ場」と「情報付き農産物」は、農と食の距離を縮め、消費者と農業生産者の信頼関係をも構築する。
野菜が広告媒体になる?
本庄PF研究会では、自分たちがつくる「本庄トキメキ野菜」のブランド保護のために、二次元コードを利用した農産物の情報共有化の仕組みをビジネスモデル特許として申請している。 「地名と商品名」だけで商標登録するのではなく、販売方法、さらには栽培方法に関わる特許取得も目指し、特産品である本庄トキメキ野菜を知的財産として保護していきたい考えだ。 野菜に張られた二次元コードの下には、「JA埼玉ひびきの」「ニレコ」「リンテック」という団体・企業名が入っている。 別に、これらの団体・企業が野菜をつくっているわけではない。本庄PF研究会がつくる安全・安心、美味しいという確かな情報を、広告媒体として利用しているのだ。 ITによる地域ブランドの確立は、その商品だけでなく、地域全体の情報発信のあり方にも、新たな可能性をもたらしそうだ。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年05月05日
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