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2006年07月05日 第109号

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REPORT
新タワーが首都直下型地震から東京を救う

 東京の新たな観光名所になり得る新東京タワー(以下、新タワー)の建設予定地が今年3月、東京都墨田・台東エリアに決まった。開発は、2011年(平成23年)に移行する地上波デジタル放送の拠点づくりであると同時に、防災や歴史をテーマとした21世紀型の都市再生を目指すものとなる。首都直下地震などに対峙(たいじ)する防災のための監視機能や、地域資源である「葛飾北斎」などを生かしたまちづくりを計画する。関連プロジェクトを合わせ1000億円超、経済波及効果430億円というケタはずれの事業の内側に秘められた、次世代型まちづくりがどんなものか?スポットをあててみたい。

NEWS
全国初、耐震補強推進組織

 地震から市民の命を守るため耐震補強を地元建設業界と住民が共同で進める―。そのための全国でもめずらしい本格的な組織が誕生した。東京都墨田区耐震補強推進協議会は6月17日、東京都墨田区内で設立総会を開き、発足した。協議会は、区内にある補強の必要な約2万棟の木造住宅を対象に耐震化を進めていく。同時に地元業界と地域との関係を復活させることで地域再生も目指す。

FEATURE 企業の役割
マイクロソフトが地域活性化を支援
徳島県上勝町の葉っぱビジネスも

 マイクロソフト株式会社は、地方や中小企業、教育機関など、IT化の遅れている、いわゆるIT弱者の支援を強化している。昨年7月に日本法人社長に就任したダレン・ヒューストン氏が発表した、国内市場における3カ年の経営方針「Plan-J」に基づくもので、ITが普及していない国内における潜在市場を顕在化させることを目的とする。具体的には、まちづくりや地域活性化を担うNPOなどの市民団体、第3セクターらとパートナーシップを結び、地域の中でIT活用の動機付け、教育、システムの販売などを包括的に行うとともに、産・学・官・民それぞれが連携し合える仕組み構築を目指す。今年中にはモデルとなる「情報活力都市」を数箇所立ち上げたい考えだ。

災害がきてもシステムは守る街づくり
NTTファシリティーズが防災ソリューション

 NTTファシリティーズは、地震や雷、火災、洪水などの自然災害から、建物やIT設備を守る「防災ソリューション」の普及に力を入れている。近年、自然災害が多発する中で、災害が発生してもITシステムなどを止めることなく業務を継続させる「事業継続計画」(BCP=Business Continuity Plan)の策定が求められていることから、企業や自治体に対して導入を促していく。

STUDY
現役が1000万人減り、高齢者が1・5倍増える
日本政策投資銀行の藻谷浩介氏

 勝ち組み観光地の代表は、由布院玉の湯(大分県由布市湯布院町)・沖縄ザ・ブセナテラス(沖縄県名護市)だ。玉の湯は1人1泊2食付き3万円台からでディスカウントなし。食事は湯布院で取れたものしか出さない。サービスを徹底しており、従業員が客の2倍いる。コンセプトは「過ごしたかった日常」。コンクリートに囲まれた都会の住人が、癒しの空間(日常)に浸りたいため訪れる。ザ・ブセナテラスはホテルのほかに、1軒1軒分かれたコテージを持っている。1泊のチャージ料は13万円。沖縄の建設会社・噛場組が産業構造転換を図り経営を成功させた。開業以来ほぼ満室状態にある。2事例を見ても、完全に客の意識が変わってしまった。環境や景観をキーワードとした展開が消費者に受けている。

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新タワーが首都直下型地震から東京を救う

日本の防災まちづくりのシンボルに!
景観価値のためデザインにこだわる

 今年5月に設立された新東京タワー鰍フ高田和夫・計画担当部長(東武鉄道渇ロ長)は、新タワーをテレビ塔・展望台としての機能だけでなく「防災まちづくりをテーマに、日本の防災のシンボルにもなるようにしたい。また誰からも親しみがもてるタワーにするためビュー(景観)価値を見いだせるよう、デザインについては、とことんこだわりたい」と述べる。
 新タワーの基本的な目的には、デジタル放送の視聴者に対する利便性向上だけではなく、防災、経済効果が位置付けられている。
 特に防災では、首都直下地震の迫る東京において必要な、新タワーの高さを生かした「監視」「シンボル機能」、災害時の「情報収集」「発信機能」といった要素をクリアできる。さらには隅田川や荒川に囲まれたエリアの水害対策など都市防災機能が備わることになる。
 開発受け皿である墨田区地域振興部新タワー・観光推進担当の河上俊郎部長は「当区は、これまで不燃化のまちづくりを実施。現在、耐震補強による『壊れない』まちづくりを進めている。区北部の向島地区は関東大震災や東京空襲での被害が比較的少なく、古い家屋や街並みが残っている。そのため、消防車が入れず、道路を拡幅したり、集合化による不燃化を進めてきた。新タワーを切り口に、地震対策を含めた防災のまちづくりを発展させていきたい」と語る。

年間来場者300万人想定
葛飾北斎館建設などを考えている

 新タワーを切り口としたエリアの活性化も大きなテーマだ。現段階の計画では、鉄道4路線(東武伊勢崎線、京成電鉄押上線、東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄浅草線)と成田・羽田空港とを直結し、年間1500万人以上の観光客が訪れる浅草や、上野、錦糸町、両国などの地域との一体化を図る。対象区域の回遊性を高めることで、東京東エリア全域の経済活性化につなげたい意向だ。
 新タワーの単独での来場者は初年度500万人、年間平均300万人を想定する。ある民間調査機関によると、経済波及効果は430億円にのぼると指摘する。
 東京東エリアの活性化が必要な背景には、同エリアの停滞があるという。統計によると、ここ数年で駅の乗り入れ客が伸びているのは渋谷、品川といった臨海地域(西エリア)。それに比べ上野、池袋などが減っているという。
 高田部長は「墨田・台東地区と、お台場、六本木、東京ディズニーランドなどを結ぶ観光ネットワークを構築し、東京東エリアの活性化に寄与したい。それが東武鉄道発祥の地に対する当社の使命」と説明する。
 新タワー建設に伴い、墨田区の地域振興部に、新タワー・観光推進担当部署が5月1日設置された。都市計画、観光、産業振興の専門スタッフ8人で構成される。周辺整備のプランニングや東武鉄道をはじめ、国土交通省、総務省や東京都、テレビ放送各社など関係機関との調整を図る。
 ただ河上部長は「2011年7月までに新タワーを完成させ、デジタル放送を開始しなければならない。あと5年の間にインフラ整備と同時に、観光や商店街活性化などのソフト面も進める必要がある」とし「この短期間に事業を実現させることは至難の業だ」と苦しい胸のうちを明かす。
 さらに河上部長は「タワーは、東武鉄道が中心で事業主体となり進めるが、すべてがプラス要因ばかりではない。自然環境をはじめ景観との折り合い、電磁波問題など、マイナスイメージも存在する。こうしたマイナス面も含め区民から受け入れられるように調整する役目が区の大きな責務だと思う。第一ステップとしてグランドデザインを9月までに作成し、区民や関係者に示したい」と述べる。
 計画中のため、インフラ整備の内容や事業年度、事業費など詳細は未定だが、河上部長は「お台場のように広い面積の開発ではなく、市街地が密集した狭い範囲を対象とした開発なので、ややもすると、現状のまちに大きな歪みを発生させる可能性もある。一言でいえば都市再生といったイメージになるのではないか」と話す。
 『都市再生』の具体論について同部長は「江戸時代の葛飾北斎や吉良上野介、池波正太郎著『鬼平犯科帳』の長谷川平蔵などの歴史文化資産・観光ポテンシャルを生かしたまちづくりに取り組みたい」と語る。開発中心ではなく、歴史的資源などを生かしたソフト面中心のまちづくりにしたい、というのだ。
 さらに河上部長は「一番避けたいのは、タワーに来て浅草に寄って、そのまま帰ってしまうこと。ぜひ、区内の向島や錦糸町、両国に立ち寄っていただきたい。観光スポットをゾーニングして、回遊性をテーマに、まち歩きができるようにしたい。民間から観光プロデューサーを登用し、新たな観光戦略を創出する。現段階での計画の目玉は、江戸時代区内に住んでいた葛飾北斎のコレクションを集めた北斎館の建設と、向島の街並みや、下町文化の再生だ」と解説する。   
 地域の商店街活性化については「再生対象の既存商店街を決め、まちづくりについて商店街や地区単位で研究してもらう」(河上部長)ことになっている。
 最後に河上部長は「浅草は実は国際的な存在となっており、春夏秋冬365日すべてがイベントで詰まっている。『灯台もと暗し』で、浅草に大きなヒントがある。同地区を学びながら21世紀の世界に通用し得るような日本のまちづくりを目指したい」と抱負を語った。

【解説・新東京タワー】
 新タワーの候補地に名乗りをあげていたのは、墨田区をはじめ、さいたま市、豊島区(池袋)、足立区など15地区。最終的に決定した理由として「技術検証の結果、他地域より優位であると同時に、新タワーにより、江戸文化の継承地としてのまちづくりが進められること、観光資源に恵まれていること」などが大きな要因だった、としている(墨田区広報報道担当・瀬戸正徳主査)。
 東武鉄道梶i墨田区)が事業主体として手を挙げていたことも、他地域よりインパクトが大きかった、という。
 新タワーは、2006年に基本設計、2007年実施設計、2008年に着工し、3年後の2011年7月の完成を目指す。現在、日建設計で設計が進められている。東武鉄道は5月1日付けで新東京タワー鰍設立。今後、放送各社や地元企業、墨田区などに出資を要請する。
 新タワーは、東武鉄道の旧貨物操車場跡地0・81haに建設する。タワーそのものの事業費は約500億円。完成後の約610mという高さは世界一を誇ることになるという。
 墨田区は建設予定地の周辺約6・43haを押上・業平橋駅周辺土地区画整理事業として整備するほか、区内の向島、錦糸町、両国、そして台東区浅草一体を一大観光ゾーンとして再構築するための、まちづくりを計画している。

投稿者 machizukuri : 更新日2006年07月05日

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