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2006年07月25日
第111号
REPORT 森林が宝の山に生まれ変わる
森林管理の究極の問題は「木が金にならない」ことだ。木材価格は低迷を続け、経営コストは増加、収益性が低い林業の従事者は減少の一途をたどる。しかし、森林には環境、教育、癒(いや)し、きれいな水や空気…と、現代社会が求めるニーズがそろっている。「木材生産」から少し視点を変えて、新たな森林産業を創出すれば、森林は宝の山に生まれ変わるのではないか―。神奈川県相模湖町では、世界で始めてNPO法人として、環境に配慮した森林管理の国際認証「FSC」を取得したボランティア団体が、数値では計り知れない経済効果を生み出している。NPO法人緑のダム北相模が展開する新たな山づくりを追った。
TOPIC コーポラティブハウスが地域の魅力を高める
間取りやデザインが決まっている分譲マンションなどと違い、住む人々が共同で土地の取得や建物の設計、建設などを行う「コーポラティブハウス」を、長野県安曇野市につくろうと取り組んでいるグループがある。
名古屋市で設計事務所を営む寺島靖夫さんらがつくる安住の会だ。限られた土地の中で建設される都市型の高層住宅ではなく、地域資源である田園、果樹園などの風景と調和する長屋形式の集合住宅を建てることで、居住者にとっての快適性だけではなく、地域全体の魅力を高める景観を創り出したいという。
森林が宝の山に生まれ変わる
発想を変え、新たな産業を創出せよ
6月末の梅雨前線に伴う大雨の中、100人を超える人々が神奈川県相模湖畔の山に集まってきた。高校生や大学生、企業、行政、一般市民…。
NPO法人「緑のダム相模」が毎月2回、定期的に開いている森林整備のボランティア活動だ。
森林整備といっても、皆がカマやノコギリを持って、草を刈ったり、木の枝を払うわけではない。間伐材を活用した木工作業に取り組む人もいれば、炭を焼く人もいる。花畑や果樹園づくりを行う人、健康のために体を動かす人など、目的は様々だ。
タクシー運転手の佐々木さんは、間伐材を使って簡単なプランターづくりに取り組んでいる。将来、自分の工房を持つのが佐々木さんの夢だ。「ここでは自分が知らない植物のことを教えてもらえるし、勉強になることがたくさんあります」と佐々木さん。逆に、チェーンソーの操作方法を人に教えたり、趣味で育てた蝶々やカブトムシを参加者に配るなど、会の中では、いつも頼られる存在でもある。
古くからボランティア活動に参加している松尾さんは仲間と無垢のテーブル作りを進める。「都会でスポーツジムに通えば5000もかかるでしょ。ここなら500円(ボランティアの参加費)でたっぷりと汗をかいて、しかも、やりたいことが実現でき、環境にいいことをした気になれるんです」と話す。
雑木林の中では、3年前に植えた広葉樹の苗木に十分光があたるように下草刈りという作業が行われている。砂漠緑化のプロジェクトに携わっている大学生の藤田さんは「まずは国内の環境を実際に見てみたいと思いました」と参加のきっかけを語る。「健康づくりのため」「自然とふれあえるから」など、下草刈りに参加する人は多く、総勢50人近くがあっという間に森林を明るくした。
山のふもとでは果樹園づくりが行われている。りんご、梅、もも、ブルーベリー、ぶどうなど、何種類もの果樹が立ち並ぶ。栄養豊富な山の土は果物の生育にもいい。周辺には花畑が整備されている。
世界初、NPOがFSCを取得
NPO法人緑のダムが管理する森(140haのうち60ha)は、2005年に、環境に配慮した森林管理の国際認証「FSC」を取得した。企業や森林を所有する行政がFSCを取得する例はあるが、NPOが認証を取得するのは「おそらく世界でも始めて」だ。
事務局長を務める石村黄仁(こうじ)さんは平成10年にNPOの前身となるボランティア組織を立ち上げた。当時、相模湖畔の森の中を歩く機会があり、その時、薄暗く、静かすぎる森の異変を直感的に感じ取ったという。
「鳥のさえずりもなければ谷川には水も流れていないんです。木は痩せて、根がむき出しになている。何かおかしさを感じました」(石村さん)。それから数日後に、新聞に掲載された「わが国の森林の現状」と題した特集記事が石村氏を動かした。
「世界の森林がものすごい勢いで減っていることを知らされました。1000年後には森林が消えてしまうかもしれない。それを放っておいていいのか。何かをしなくてはいけないと思ったのです」。
本業は空気清浄機の開発・販売。石村さんは「世界の空気清浄機である森林をメンテナンスしなくてはいけないと思いました」と振り返る。
しかし、素人団体が何をどう進めていいのかわからない。何か指導書がほしいと探しているときに、見つけたのがFSCのガイドラインだった。
国内の先進地などを視察し勉強を重ね、2005年にFSCを取得した。
■原産地証明書を発行
FSCは、材や製品にロゴマークがつけられるため、環境に配慮した森林で育てられた材であることが消費者の目からもわかりやすい。そのため、最近では、住宅メーカーや家具メーカーからの引き合いが多くなっているという。
NPO法人緑のダム北相模では、相模湖畔の森の年間成長量(25?)を上回らない出荷を基本としている。が、最近では、FSCを取得してもうまく運用ができていない他県の行政などから「販売先を紹介してくれ」などの相談を持ち込まれることも多く、こうした行政や団体へのサポート活動も行っている。
また、どこの山で誰によって伐採され、どの運搬業者によって、どこの製材屋に運ばれたか、どこの工務店に渡ったか、すべて流通経路が明確になる原産地証明書の発行も開始している。
FSC材を活用した子供たちの机づくりも展開する。
具体的には、緑のダム北相模が管理する山、あるいは他県のFSCの森林から伐採した材を、特定の製材工場へ運び、プレカット加工してもらったものを、学校(教育委員会)へ販売する。
仕入れ価格は1万5000円。これを教育委員会へは2万円で売ることで、差額の5000円をNPOの活動経費へ回す。
同様に、他の環境NPOや市民団体にも呼びかけ、彼らが2万円で机を学校へ販売し、差額をそれぞれの団体の活動資金に役立ててもらえる仕組みを提案する。
「自分たちができる活動は、たかが知れています。もっと全国各地で取り組まなければ環境保全なんて、できません」と石村さん。市場の独占ではなく、多くの人が取り組めるシステムにすることで、より大きな運動へと発展させるねらいだ。
机を組み立てるのは父兄と子供たち。「いい匂いがするね、この匂いは、脳波を安定させます、血圧を安定させます」など、生の環境教育を行いながらの作業をしてもらい、木材を伐採した森へ連れていってあげれば、環境への理解も深めてもらうことができると期待する。
■1億円をはるかに上回る経済効果
現在、NPO法人北相模の正規会員は107人。森林ボランティアに参加する活動会員は400人近くに達する。会員の中には、FSC材で実際に家を建てた人もいる。
ボランティア活動を通じて習得した技術を生かし起業する人もいる。
環境保全、教育、FSC材の活用、癒し、健康――。年間わずか1300万円という活動費は、おそらく1億円を遥かに超えるだろう経済効果を生み出している。
ただ、石村さんは、大切なのは「森林破壊という負の遺産を子孫に残してはならない」という理念だと強調する。
この理念のもとに、集まってくる人が、自分のやりたいことを見つけ、それをNPOが応援することで、森林整備が世論を動かし、同時に経済効果が生み出されていくのだと石村さんは説明する。
山梨県大月と、神奈川県鎌倉には支部組織が誕生している。平塚にも近く支部が立ち上がる。流域全体でFSCの取得となれば、これも世界で初の快挙となる。
県境をまたいだ市民レベルのつながり、行政のつながり、さらには政治家のつながりと、森林づくりのサポート体制まで含めた流域ネットワーク構築を目指したいとする。
来年5月には、流域全体で、水源環境保全のシンポジウムを開催する予定だ。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年07月25日 | コメント (0) | トラックバック
2006年07月15日
第110号
REPORT 空き町家が学生の交流拠点になる
奈良市では、旧市街地(奈良町)に点在する空き町家を、全国の学生や研究者、芸術家、奈良のファンらが利用する長期滞在型のセミナーハウスとして整備しようというプロジェクトが始まっている。伝統的な建築物である町家を保存するとともに、地域に在住する学者や芸術家、県や市、地元大学らが一体となってセミナーハウスの利用者の研究活動などを支援する体制を整えることで、地域の課題である市街地の衰退に歯止めをかける。複数のセミナーハウスをネットワークで結ぶことで利用者同士の交流も進め、将来的にはセミナーハウスが新しい奈良文化を創造、発信していくことを期待する。
NEWS 政府が都市と地域からまちづくりの担い手を支援
地域再生と都市再生の両面から地域活性化を推進している内閣府は、地方大学の地域貢献活動など、地域の「担い手」づくり、人材のネットワークづくりに力を入れている。
新型交付税で自治体はますます厳しくなる
竹中平蔵総務相の私的懇談会「地方分権21世紀ビジョン懇談会」が提言した新型交付税は、小規模自治体に大きな影響をもたらす――。第7回小さくても輝く自治体フォーラムは6月24日、25日の2日間、岐阜県白川村で開き、この中で立命館大学の森裕之助教授(政策科学部)は、新型交付税が導入された場合のいくつかの自治体における財政シミュレーションを示した上で「都市と農村館の財政格差がますます大きくなる」と批判した。
平成の大合併の迷路から抜け出せない
平成の大合併の第一幕が終了し、3232あった市町村は1820にまで激減した。合併特例債という誘い水と交付税削減のムチが威力を発揮し、日本地図は全面的に塗り替えられることになった。
合併で生まれ変わった自治体はもちろん、単独路線を選択した自治体も含め、多くの市町村が自立したまちづくりに向けて、新たな一歩を踏み出している。
しかし、全国の自治体の中には平成の大合併の大波に翻弄され、進むべき道筋を見失ってしまったところもある。方向感覚を失い、迷路から抜け出せずにいるのである。
静岡県新居町がその典型事例と言える。
空き町家が学生の交流拠点になる
プロジェクトの仕掛人は ローカル・ガバナンス研究所(奈良市)所長の木原勝彬氏(60)。2004年の奈良市長選で、本来、候補者が掲げるべきマニフェスト(公約)を、市民の視点からつくって逆に候補者に突きつけた全国でも例がない「市民マニフェスト」の発案者だ。
マニフェストは、2003年末から1年近くをかけて、延べ500人の市民参加のもとまとめられた。地域の課題を洗い出し、問題の共有化などの過程を経て、「もしも私が市長だったら、こんな政策をこのように実行する」という市民の意見を、期限、財源、数値目標付きの公約として打ち出した。
注目すべきは、行政主体の政策だけではなく、市民としてやるべきことを、同じように期限、財源、数値目標付きで盛り込んでいる点だ。
木原氏は「大事なことは、首長や行政に任せるだけではなく、自分たちでできることは自分たちでやるということです」と語る。その中の1つに、空き町家を学生や研究者、芸術家らの長期滞在型セミナーハウスとして再生しようという今回のプロジェクトがある。
問題は、空き町家を再生したセミナーハウスの運営が、はたしてビジネスとして成り立つかどうかだ。
プロジェクトを進める「奈良の街がセミナーハウス」研究会では、内閣府の都市再生モデル調査事業を活用することで、独自にマーケティングにもとづくシミュレーションなども行っている。「市民主導の地域のための事業」を追った。
歴史に学ぶ、もてなしの心と出会いの機能
奈良市の旧市街地(奈良町)は、710年に建都された平城京から東に行った外京(げきょう)と呼ばれる地区に古くから発展した我が国最古の歴史的市街地だ。東大寺や興福寺、春日大社などの寺社や、土蔵や格子で飾られた町家が残る風情ある町並みは、まさに地域の歴史・文化的資産といえる。
一方、奈良町の人口は減少傾向で、高齢化も進み、全国の中心市街地と同様、空家の増加や商店数の減少が課題となっている。
プロジェクトを進める「奈良の街がセミナーハウス」研究会が2006年に行った調査では、旧市街地(人口2万7000人、世帯数1万1900)に、空町家は90軒あった。こうした町家を学生や研究者、芸術家らの長期滞在型セミナーハウスとして再生しようというのがプロジェクトの目標だ。
■歴史に再生の答えがある
奈良町にはかつて、古代史や仏教美術、神社建築などを学ぶ学生や研究者の定宿として有名な、田村キヨノさん(故人)が経営する「日吉館」という旅館があった。日吉館は、奈良の「芸術院」、「学士院」とも呼ばれ、歌人の会津八一や、文芸評論家の亀井勝一郎、哲学者の和辻哲郎ら著名な学者・文化人も宿泊しては、他の利用者と交流する談論風発の「サロン」の場でもあった。こうした知的環境の中で、多くの学徒が育った。
「奈良の街がセミナーハウス」プロジェクトが目指すのは、『奈良のおっかさん』として慕われた田村キヨノさんのもてなしの精神と、日吉館の機能を継承・発展させたセミナーハウスの創出だ。
■セミナーハウスは教材だ
奈良町には、すでにいくつかのセミナーハウスもある。東京芸術大学や武蔵野美術大学、奈良女子大学など、大学のセミナーハウスに加え、企業では、奈良交通株式会社らが、今年4月から指定管理者制度により、県所有の「国際奈良学セミナーハウス」を管理・運営している。古い街並みや、歴史・文化を学べる研修コースなどを備えている。
このうち、奈良女子大学では、文部科学省の地域貢献特別支援事業を活用して、奈良町の空家を利用した大学セミナーハウスを開設した。
大掛かりな改修はせずに、町家本来の姿を残すように心がけ、配管と水周りに関しては、住環境デザインが専門の研究室の学生が設計をし、きれいに修復した。
冬の寒さや、夏の暑さをそのまま感じてほしいと冷暖房器具は入れず、その代わりとしてコタツとストーブを完備させた。梁組みが見える開放的な空間も構造の勉強になっているという。
こうした既設のセミナーハウスもネットワーク化することで、利用者の選択肢を増やすとともに、利用者同士の交流の輪を広げたい考えだ。
セミナーハウス研究会の事務局を担当する奈良女子大学大学院の鈴木遥さんは「奈良の街中での暮らしを楽しんでもらいがら、研究活動や創作活動に専念できるようにサポートしていきたい」と話している。
■地域全体で利用者を支える
最大のポイントは、利用者の研究活動や創造活動を地域がどれだけ支援できるか。
研究会では、WEBを活用したアンケート調査や、大学の教授らを対象とした意向調査などを行い、利用者ニーズを踏まえたサポート体制を検討している。
具体的には、奈良周辺に在住の歴史、文化、宗教、美術、建築など「奈良学」関係者とのネットワーク化や、県・市、観光協会、地元大学、社寺、図書館、資料館らとの連携などだ。
複数のセミナーハウスを統括するコア施設の立ち上げや、総合窓口・調整役としてのセミナーハウス協会の設立なども予定する。
問題は、空町家を再生したセミナーハウスの運営が、はたしてビジネスとして成り立つかどうかだ。
■年金生活者の副業ビジネスになる!
大前提として法律上の課題をクリアしなくてはならない。宿泊施設の運営は旅館業法による簡易宿泊営業の許可を奈良市長から受けることと定められている。建築基準法に基づく用途変更や、食品衛生法にもとづく台所の改修、消防法による誘導灯の設置など、すべて対応していたら莫大な費用がかかる。
このため、既に京都などでは導入されている町家をウィークリーマンションとして貸し出す方式(所有者と宿泊者が定期借家契約を結ぶ)を検討するとともに、国への特区申請、県市の関連条例の規制緩和などを働きかけていきたいとしている。
それでも採算的には楽ではない。
例えば、収用人員8人の町家で1人5000円の単価とした場合、1年のうちの稼働率を20%(民宿平均稼働率25%から想定)とすると、年間の売上高は292万円。それに対する諸経費は売上高の35%として、純利益は189万8000円と決して高くはない。
しかし、木原氏は「生活を支える本業収入として成り立たなくても、眠っている資産である空き町家を利用することで、共働きや年金生活者の老後の楽しみ、あるいは固定資産税対策などにはなる。一人では儲からないビジネスだが、地域が一体となって取り組めばコミュニティービジネスになる」と語る。
政府が都市と地域からまちづくりの担い手を支援
地域再生と都市再生の両面から地域活性化を推進している内閣府は、地方大学の地域貢献活動など、地域の「担い手」づくり、人材のネットワークづくりに力を入れている。
地域再生事業推進室では、地方の大学と自治体などが連携した取り組みを支援する「地域の知の拠点再生プログラム」を今年度の施策の柱に置く。地方自治体が作成する地域再生計画に、地方大学と自治体が連携した取り組みなどを盛り込み、これを政府が認定すれば、関連省庁から規制緩和や財政的な支援などを受けられる仕組みだ。具体的には文部科学省をはじめとした各省庁の11項目の支援措置を盛り込んでいる。
■山梨大学のワイン人材育成など
6月29日には第1回目となる知の拠点再生プログラムを活用した地域再生計画を発表。山梨県の「ワイン人材活性化計画」や、岩手県の「地場産業技術による木質バイオマス地域内循環利用推進計画」など20の計画を認定した(地域再生計画全体では77計画)。
このうち、山梨県では、山梨大学が、県や地元のワインメーカーらと協力して、ワイナリー技術者の再教育、大学院修士課程におけるワイントップエリートの養成などを行う。
米国カリフォルニア大学、フランスボルドー大学などのワイン科学における世界トップレベルの大学から講師を招きグローバルスタンダード教育を展開するほか、ワイン製造に携わる「ワイン人材認定制度」の創設、ワイナリー創業を目指す起業家などのビジネス支援などを予定する。国は、年間5000万円を上限に、5年間にわたり支援する(文部科学省・地域再生人材創出拠点の形成事業)。
豊富な森林資源を持つ岩手県は、間伐材の多くが利用されないで林地に放置されていたり、製材所から排出される端材や樹皮の多くが産業廃棄物になっていることから、県内の大学や研究機関、企業らとの連携により、地場産業技術を活用した木質バイオマスのエネルギー利用を進める。
木質バイオマスを活用した暖房や給湯など小規模熱利用方法を確立し、木材産業の振興と新たな雇用創出を目指す。国は農水省の「知的・人的資源活用による農林水産研究の実用化促進事業」により取り組みを支援する。
都市再生本部
大学ネットワークに600人
一方、都市再生本部では、主に情報面から大学と地域の連携など担い手づくりを支援している。
具体的には、パソコンのメール機能を通じて、多くの人と情報が共有化できるメーリングリストを活用して、全国の大学や地方自治体、まちづくり団体らが情報交換の行えるネットワークづくりを進めている。
6月8日時点までのメーリングリストへの参加者は、地方公共団体が124団体・207人、大学・高等専門学校が170団体・302人、まちづくり団体などが20団体・33人、国の省庁が26人の合計314団体・568人(6月末時点で600人超え)。
情報交換の中からは「わが町には大学が無い」という相談に対して、近県の大学から支援の申し入れがあるなど、情報交換による「出会い」も出ているという。また、地方都市の大学からは、メーリングリストに参加したことで「閉塞状況から開放された」などの感想も寄せられている。
■8月に全国大会
メーリングリストの参加者らを対象にした全国大会も予定する。今年度は8月6日に、東京都中央区の中央区立常盤小学校で、全国都市再生まちづくり会議の一環として、大学連携プロジェクトの報告会を企画する。いくつかの大学が地域と連携したまちづくり活動などを発表する予定だ。
社会貢献に取り組み企業も支援
都市再生本部では、今後、大学に限らず、NPOや企業など、より広い概念でのまちづくりの担い手を育成していく。7月4日に発表された都市再生の新たな基本方針では@様々なまちづくり担い手の連携強化Aまちづくり担い手の裾野の拡大B担い手支援機関との連携強化――の大きく3つの方向性が示された。
@さまざまな担い手の連携強化では、これまで都市再生本部が進めてきた都市再生モデル調査の実施主体などを対象にモデル的にネットワークを構築し、ここに地方公共団体や社会貢献活動に取り組む企業などにも参加してもらい、情報交換・意見交換を行える環境を整備する。
Aまちづくり担い手の裾野の拡大では、まちづくり活動に取り組む意欲を持った団体などが、地域のまちづくり活動の担い手として十分活動できるよう関係法令などの手続きや管理・運営への参画にかかわる位置付けを明確化する。例えば、都市計画法では地権者だけではなく、まちづくりの推進活動を行うNPO法人などでも都市計画決定などの提案ができるようにすることなどを想定する。
B担い手支援機関との連携強化では、中間支援組織など、すでにまちづくりの担い手を支援している「目利き力」がある機関と行政機関の連携を強化することで、空理空論に陥らず、現場主義にもとづいてまちづくり活動に対する的確な支援を行う活動を促進する。
こうした機関が持つ人材や経験、ノウハウなどの情報交換ができる場の提供や、担い手支援機関と社会貢献を行う企業との交流なども進めていく。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年07月15日 | コメント (0) | トラックバック
2006年07月05日
第109号

REPORT 新タワーが首都直下型地震から東京を救う
東京の新たな観光名所になり得る新東京タワー(以下、新タワー)の建設予定地が今年3月、東京都墨田・台東エリアに決まった。開発は、2011年(平成23年)に移行する地上波デジタル放送の拠点づくりであると同時に、防災や歴史をテーマとした21世紀型の都市再生を目指すものとなる。首都直下地震などに対峙(たいじ)する防災のための監視機能や、地域資源である「葛飾北斎」などを生かしたまちづくりを計画する。関連プロジェクトを合わせ1000億円超、経済波及効果430億円というケタはずれの事業の内側に秘められた、次世代型まちづくりがどんなものか?スポットをあててみたい。
NEWS 全国初、耐震補強推進組織
地震から市民の命を守るため耐震補強を地元建設業界と住民が共同で進める―。そのための全国でもめずらしい本格的な組織が誕生した。東京都墨田区耐震補強推進協議会は6月17日、東京都墨田区内で設立総会を開き、発足した。協議会は、区内にある補強の必要な約2万棟の木造住宅を対象に耐震化を進めていく。同時に地元業界と地域との関係を復活させることで地域再生も目指す。
FEATURE 企業の役割 マイクロソフトが地域活性化を支援 徳島県上勝町の葉っぱビジネスも
マイクロソフト株式会社は、地方や中小企業、教育機関など、IT化の遅れている、いわゆるIT弱者の支援を強化している。昨年7月に日本法人社長に就任したダレン・ヒューストン氏が発表した、国内市場における3カ年の経営方針「Plan-J」に基づくもので、ITが普及していない国内における潜在市場を顕在化させることを目的とする。具体的には、まちづくりや地域活性化を担うNPOなどの市民団体、第3セクターらとパートナーシップを結び、地域の中でIT活用の動機付け、教育、システムの販売などを包括的に行うとともに、産・学・官・民それぞれが連携し合える仕組み構築を目指す。今年中にはモデルとなる「情報活力都市」を数箇所立ち上げたい考えだ。
災害がきてもシステムは守る街づくり NTTファシリティーズが防災ソリューション
NTTファシリティーズは、地震や雷、火災、洪水などの自然災害から、建物やIT設備を守る「防災ソリューション」の普及に力を入れている。近年、自然災害が多発する中で、災害が発生してもITシステムなどを止めることなく業務を継続させる「事業継続計画」(BCP=Business Continuity Plan)の策定が求められていることから、企業や自治体に対して導入を促していく。
STUDY 現役が1000万人減り、高齢者が1・5倍増える 日本政策投資銀行の藻谷浩介氏
勝ち組み観光地の代表は、由布院玉の湯(大分県由布市湯布院町)・沖縄ザ・ブセナテラス(沖縄県名護市)だ。玉の湯は1人1泊2食付き3万円台からでディスカウントなし。食事は湯布院で取れたものしか出さない。サービスを徹底しており、従業員が客の2倍いる。コンセプトは「過ごしたかった日常」。コンクリートに囲まれた都会の住人が、癒しの空間(日常)に浸りたいため訪れる。ザ・ブセナテラスはホテルのほかに、1軒1軒分かれたコテージを持っている。1泊のチャージ料は13万円。沖縄の建設会社・噛場組が産業構造転換を図り経営を成功させた。開業以来ほぼ満室状態にある。2事例を見ても、完全に客の意識が変わってしまった。環境や景観をキーワードとした展開が消費者に受けている。
新タワーが首都直下型地震から東京を救う
日本の防災まちづくりのシンボルに!
景観価値のためデザインにこだわる
今年5月に設立された新東京タワー鰍フ高田和夫・計画担当部長(東武鉄道渇ロ長)は、新タワーをテレビ塔・展望台としての機能だけでなく「防災まちづくりをテーマに、日本の防災のシンボルにもなるようにしたい。また誰からも親しみがもてるタワーにするためビュー(景観)価値を見いだせるよう、デザインについては、とことんこだわりたい」と述べる。
新タワーの基本的な目的には、デジタル放送の視聴者に対する利便性向上だけではなく、防災、経済効果が位置付けられている。
特に防災では、首都直下地震の迫る東京において必要な、新タワーの高さを生かした「監視」「シンボル機能」、災害時の「情報収集」「発信機能」といった要素をクリアできる。さらには隅田川や荒川に囲まれたエリアの水害対策など都市防災機能が備わることになる。
開発受け皿である墨田区地域振興部新タワー・観光推進担当の河上俊郎部長は「当区は、これまで不燃化のまちづくりを実施。現在、耐震補強による『壊れない』まちづくりを進めている。区北部の向島地区は関東大震災や東京空襲での被害が比較的少なく、古い家屋や街並みが残っている。そのため、消防車が入れず、道路を拡幅したり、集合化による不燃化を進めてきた。新タワーを切り口に、地震対策を含めた防災のまちづくりを発展させていきたい」と語る。
年間来場者300万人想定
葛飾北斎館建設などを考えている
新タワーを切り口としたエリアの活性化も大きなテーマだ。現段階の計画では、鉄道4路線(東武伊勢崎線、京成電鉄押上線、東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄浅草線)と成田・羽田空港とを直結し、年間1500万人以上の観光客が訪れる浅草や、上野、錦糸町、両国などの地域との一体化を図る。対象区域の回遊性を高めることで、東京東エリア全域の経済活性化につなげたい意向だ。
新タワーの単独での来場者は初年度500万人、年間平均300万人を想定する。ある民間調査機関によると、経済波及効果は430億円にのぼると指摘する。
東京東エリアの活性化が必要な背景には、同エリアの停滞があるという。統計によると、ここ数年で駅の乗り入れ客が伸びているのは渋谷、品川といった臨海地域(西エリア)。それに比べ上野、池袋などが減っているという。
高田部長は「墨田・台東地区と、お台場、六本木、東京ディズニーランドなどを結ぶ観光ネットワークを構築し、東京東エリアの活性化に寄与したい。それが東武鉄道発祥の地に対する当社の使命」と説明する。
新タワー建設に伴い、墨田区の地域振興部に、新タワー・観光推進担当部署が5月1日設置された。都市計画、観光、産業振興の専門スタッフ8人で構成される。周辺整備のプランニングや東武鉄道をはじめ、国土交通省、総務省や東京都、テレビ放送各社など関係機関との調整を図る。
ただ河上部長は「2011年7月までに新タワーを完成させ、デジタル放送を開始しなければならない。あと5年の間にインフラ整備と同時に、観光や商店街活性化などのソフト面も進める必要がある」とし「この短期間に事業を実現させることは至難の業だ」と苦しい胸のうちを明かす。
さらに河上部長は「タワーは、東武鉄道が中心で事業主体となり進めるが、すべてがプラス要因ばかりではない。自然環境をはじめ景観との折り合い、電磁波問題など、マイナスイメージも存在する。こうしたマイナス面も含め区民から受け入れられるように調整する役目が区の大きな責務だと思う。第一ステップとしてグランドデザインを9月までに作成し、区民や関係者に示したい」と述べる。
計画中のため、インフラ整備の内容や事業年度、事業費など詳細は未定だが、河上部長は「お台場のように広い面積の開発ではなく、市街地が密集した狭い範囲を対象とした開発なので、ややもすると、現状のまちに大きな歪みを発生させる可能性もある。一言でいえば都市再生といったイメージになるのではないか」と話す。
『都市再生』の具体論について同部長は「江戸時代の葛飾北斎や吉良上野介、池波正太郎著『鬼平犯科帳』の長谷川平蔵などの歴史文化資産・観光ポテンシャルを生かしたまちづくりに取り組みたい」と語る。開発中心ではなく、歴史的資源などを生かしたソフト面中心のまちづくりにしたい、というのだ。
さらに河上部長は「一番避けたいのは、タワーに来て浅草に寄って、そのまま帰ってしまうこと。ぜひ、区内の向島や錦糸町、両国に立ち寄っていただきたい。観光スポットをゾーニングして、回遊性をテーマに、まち歩きができるようにしたい。民間から観光プロデューサーを登用し、新たな観光戦略を創出する。現段階での計画の目玉は、江戸時代区内に住んでいた葛飾北斎のコレクションを集めた北斎館の建設と、向島の街並みや、下町文化の再生だ」と解説する。
地域の商店街活性化については「再生対象の既存商店街を決め、まちづくりについて商店街や地区単位で研究してもらう」(河上部長)ことになっている。
最後に河上部長は「浅草は実は国際的な存在となっており、春夏秋冬365日すべてがイベントで詰まっている。『灯台もと暗し』で、浅草に大きなヒントがある。同地区を学びながら21世紀の世界に通用し得るような日本のまちづくりを目指したい」と抱負を語った。
【解説・新東京タワー】
新タワーの候補地に名乗りをあげていたのは、墨田区をはじめ、さいたま市、豊島区(池袋)、足立区など15地区。最終的に決定した理由として「技術検証の結果、他地域より優位であると同時に、新タワーにより、江戸文化の継承地としてのまちづくりが進められること、観光資源に恵まれていること」などが大きな要因だった、としている(墨田区広報報道担当・瀬戸正徳主査)。
東武鉄道梶i墨田区)が事業主体として手を挙げていたことも、他地域よりインパクトが大きかった、という。
新タワーは、2006年に基本設計、2007年実施設計、2008年に着工し、3年後の2011年7月の完成を目指す。現在、日建設計で設計が進められている。東武鉄道は5月1日付けで新東京タワー鰍設立。今後、放送各社や地元企業、墨田区などに出資を要請する。
新タワーは、東武鉄道の旧貨物操車場跡地0・81haに建設する。タワーそのものの事業費は約500億円。完成後の約610mという高さは世界一を誇ることになるという。
墨田区は建設予定地の周辺約6・43haを押上・業平橋駅周辺土地区画整理事業として整備するほか、区内の向島、錦糸町、両国、そして台東区浅草一体を一大観光ゾーンとして再構築するための、まちづくりを計画している。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年07月05日 | コメント (0) | トラックバック
