« 「九州観光マスター検定試験」改訂版テキストを発売 (大河) | メイン | 第113号 »
2006年08月10日 藻谷浩介(日本政策投資銀行参事役)
人...
人口増減の徹底的な分析、そして全国すべての自治体を訪れるという徹底した現地主義により、日本のまちづくりを鋭く斬る藻谷氏。年間の講演回数は400回にも及ぶ。地域活性化のエッセンスは何か?

↓続きはここから
人口減少時代のまちづくりエッセンス
勝ち組み観光地の代表は、由布院玉の湯(大分県由布市湯布院町)・沖縄ザ・ブセナテラス(沖縄県名護市)だ。
玉の湯は1人1泊2食付き3万円台からでディスカウントなし。食事は湯布院で取れたものしか出さない。サービスを徹底しており、従業員が客の2倍いる。コンセプトは「過ごしたかった日常」。
コンクリートに囲まれた都会の住人が、癒しの空間(日常)に浸りたいため訪れる。ザ・ブセナテラスはホテルのほかに、1軒1軒分かれたコテージを持っている。1泊のチャージ料は13万円。沖縄の建設会社・噛場組が産業構造転換を図り経営を成功させた。開業以来ほぼ満室状態にある。
2事例を見ても、完全に客の意識が変わってしまった。環境や景観をキーワードとした展開が消費者に受けている。
商業面でも大きな変化が起きている。売り場面積のデータを見ると1991年に100だったものが、2004年には131にまで拡大した(グラフ1)。販売額はどうなったのか?逆に94にまで下落してしまった。この傾向は地方だけで、東京など都市圏は異なるかというとそうではない。都会も含め全国どこでも同じ状況なのだ。では小売販売額が伸びなくなった理由を、次の3つの中から選んでみてもらいたい。
@長期不況による「デフレ」が原因。デフレさえ克服すれば回復する。A長期不況で1997年をピークに国民所得が落ちているため。B所得が増えないのに店を増やしすぎたため過当競争で値崩れが起きた。
答えはBだ。商業活性化策といって、郊外にイオンを設置する、中心市街地に再開発で高層ビルを建設する、こうした行動は、火が消えそうになっている状況に、さらに水をかぶせるような行為だ。
そもそもマクロ経済学だけに縛られると、経済の実態がわからなくなってしまう。
例えば1990年に1・54だった出生率は2000年には1・36に下がった。では出生者数はどうなったのか?答えは横ばい。率が下がっても減らなかったのは親が増えたため。少子化について、だれも彼もが出生率でしか議論しない。今の日本では実は元気な子どもを出産できる30歳〜34歳の女性が多い。ところが15歳〜19歳代は、その年代層の6割しかいない。したがって(今の出生率が少々上向いても)10年後には子どもが4割も減るのだ。率を見るだけで実数を把握していないため状況判断ができない。ここが日本の最大のピンチなのに、マスコミを含め、だれも指摘しない。
一方、高齢化率は2000年の17・4%が2015年には26%に上がる。ではお年寄りの数は、どうなるのか?答えは1・5倍も増える。65歳以上は、2000年に約2200万人だったものが、2015年には約3300万人に膨れ上がってしまうのだ。特に東京大都市圏の高齢化は深刻だ。2000年に人口全体の9%だった70代以上は、2020年には20%を占める(グラフ2)。ところが都会では、高齢者対策が進んでいない。
さて、さらに質問だが、失業率・失業者数・就業率・就業者数、この中で日本の経済に1番影響を与える要素はなにか?政府は、失業率を一般的な景気判断として使っている。私の答えは、就業者数だ。失業している人が何千万人いようが、働いている人が増えていれば、世の中の景気は良くなる。日本で平成8年が1番働く人が多くて元気だったため、ここが日本経済のピークだと考えている。バブルが崩壊しても働く人が増えていたのだ。就業者が増えれば給料が増え、消費が上向くなど結果的に日本の景気を押し上げる。
私は出生率、高齢化率、失業率、この3要素をもとに組み立てられた経済理論はナンセンスだと思っている。率ばかりに目をやり実数を見ていないため、現実から遊離してしまう。今のマクロ経済学だけでは物事が見えなくなる。
平成2年に6915万人いた20歳〜59歳の現役層は、平成12年には185万人も増え、7100万人となった(グラフ3)。バブルが崩壊しても国民所得は増えたのだ。ところが平成17年には153万人も減り、6947万人となり、平成32年には実に1057万人も減少し、6043万人となってしまう。現役が激減する。
これに対して国はあわてて子どもを増やす政策を推進している。しかし15年後に20歳となるには、今5歳でなければならない。現役層減少を補う政策とはなっていない。移民政策を挙げる人もいるが、これも絶対数をカバーできるものではない。現在登録している外国人は197万人(日本の総人口の1・55%)で、この10年間で60万人が増えた。しかし15年間で1000万人が減ることに対する根本的な解決策とはならない。1000万人という数字を移民で補うことは、必要な福祉・教育対策を考えれば絶対に出来ない。
総人口が減り、現役が減り、高齢者が増える中で、住宅建設を推進する政策が、いかにバカなことかわかる。既に日本中に住宅が5000万棟もあるのだ。世帯は4000万しかない。1000万は既に空家。東京都市圏を中心に団塊世代が購入した住居なのだ。
今日本で起きつつあることは高齢者が増え、現役世代が減るという事実。この流れの中では、由布院玉の湯は今後も確実に繁盛する。センスの良いお年寄りを対象とした商売が確実に儲かるのだ。
日本の国際競争で勝利したお金は増えている!
地権者対策がポイントだ
これから日本の環境は激変する。70代以上が全人口の2割以上になる(グラフ4)。再来年を注目する必要がある。まず小売販売額が、ものすごい勢いで落ちる。オフィス・通勤定期需要などが激減する。シティホテルの経営は厳しくなる。団塊世代の退職者が本格化するためだ。どうすればいいのか?日本が滅びるという評論家もいる。
しかし日本は滅びない。対応をすればいいのだ。では何をするのか?安全安心で景観の良いまちづくりをする。まちづくりの成功した地域には、世界中の観光客や文化人がなだれ込む。この反対のイメージが六本木ヒルズ。15年もすればボロボロで、かならずうまくいかなくなる。
日本が滅びないという理由には、日本の輸出が外貨を稼いでいる事実がある。日本製品の販売額は現在63兆円(2005年)。バブル期の41兆円より20兆円も増加している。貿易黒字額(輸出―輸入)は10兆円前後を推移している。海外投資のリターンである金利=所得黒字は11兆円。バブル期の3兆円の4倍近くになっている。世界一の金持ち国が不況だと嘆き、国内では汚い高層ビルを建てまくっている。国際競争で勝利したお金を、国内の本当のまちづくりに投資していないのだ。
本当のまちづくりをどうやれば良いのか?従来と全然異なることにチャレンジする。人口が減り、高齢者が増える中、例えれば花のような地域にすることを目指すべきだ。根(家)、葉(企業の事業所)、茎(病院・学校・役所・集会所)、そして花(お店)が、しっかりと存在する中心市街地づくりだ。定期借地権を活用し、店・住宅・オフィス・病院・役所を中心街に戻す。
これまでは商店街・住民・行政だけで進めてきたが、地権者を忘れてしまったため、ことごとく失敗してきた。ではどうやって地権者を巻き込むのか。国はまちづくり3法見直しを行った。さらに中心市街地で貸し渋り空き店舗を抱える地権者に対する課税などを検討している。店舗などに貸し出さないような権利者に対し税金が掛かる仕組みだ。まちづくりのための条件は揃いつつあるのだ。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年08月10日
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
