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2006年09月05日 第115号

REPORT 日本固有の里山を現代アートが蘇らせた
「何これ―」「きれいだね―」
たどり着いた過疎の村にあるブナ林に植えられた3万本のビーズの花を見た瞬間、発せられた言葉だ。17軒しかない集落の住民全員が現代アートの作家と2年間を掛けてつくった協働作品。名付けて「こころの花」。むかい入れてくれた村の人々の笑顔に触れた来訪者は、里山を見る眼が変わっている。新潟県十日町市・津南町で開催されている、あの大地の芸術祭・越後妻有(つまり)アートトリエンナーレでの現象だ。広大な農村地帯に300以上の「びっくり箱」(作品)が仕掛けられている。箱を開け、各現代アートに触れた者は、妻有の地を好きになっている自分に気付く。文化を切り口としたイベントが、毎回100億円超の経済波及効果を生み、地域再生を実現しようとしている。大地の芸術祭とは何か?実態に迫ってみた。
FEATURE 観光カリスマ・加藤文男氏が語る 年間観光客80万人、人口1%雇用を達成
旧富浦町の時代、町長から道の駅開設・運営の仕事をおおせつかった。平成3年から15年まで携わった。施設のテーマは、産業・文化の振興、情報発信、そして運営組織の黒字。4点セットを求められた。大変難しい要求で、事実、非常に苦労した。公務員でありながら1つの事業に13年間かかわった。死ぬような思いでやってきた――――。(7月に都内で開催されたISAC研究部会において)
大学を地域活性化に使え!
日本地域政策学会は7月、高崎市内の高崎経済大学内において第5回全国大会を開催した。「大学と地域が連携したまちづくり」が大会テーマ。このなか東京大学の大西隆教授が「大学と地域の連携による地域振興」、NPOサポートセンターの山岸秀雄理事長が「産官学NPOプラットフォーム」という演題で、それぞれ講演した。
INTERVIEW 石原武政・関西学院大教授に聞く まちづくりの中身は各地域がつくる!
関西学院大の石原武政教授に、まちづくり3法見直しに至る経緯や、その内容、考え方などをインタビューした。前号に続く特別インタビュー後半
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200の集落にこだわる
学問・文化を考える地に再生
平成6年度から新潟県が始めた広域圏単位の活性化支援事業を受け、十日町(妻有)地域はアートを切り口とすることを選択、北川フラム氏(アートディレクター、新潟県出身)を招請した。
北川氏は、まず舞台となった妻有地域について「典型的な過疎の農村地帯。豪雪地域で地震(平成16年10月、中越地震が発生)もある。棚田が多く、平らな水田が存在しない。厳しい環境の中で、1000年〜1500年といった長きにわたる人々の労働の歴史がある。日本の里山文化で、世界にはない独自のもの。現代社会が切り捨てようとしている場所だ」と客観的に位置付けた上で、導入した現代アートについて「日本の根である里山をキャンバスとした時、アーティストは最も美しく見せる仕事ができる。人の土地で作品をつくろうとすれば当然、反対が起こる。現地の人にとり現代アートなどは、理解できる範疇にはない。しかし作家は、ものすごく地域の勉強をする。制作過程は基本的には労働。そこで地域の人々とつながっていく。反目していた地元の人々と作家の共同作業が起こり出す。そのコラボレーションを協働という言葉で表現し出したのも、このイベントからだ」と考え方や経緯について振り返る。
芸術祭について北川氏は「妻有にある200の集落にこだわった結果、広大な地域に作品が点在することとなった。今の世の価値観では、多くの情報(作品)に最短でアクセスすることが求められる。妻有では1つの作品に、めぐり会おうと思えば、車で大変な思いをして行かなければならない。きわめて非効率だが、その行程で、五感を通じて、草いきれ、風のさわやかさ、そして地域の人々の人情に触れることができる。里山の中で人間性を回復できる」と説明し、さらに「里山は単なる自然ではなく、人間が農業を通じて文化を形成してきた場所。日本人の生活そのもの。アートを通じて再認識できるイベントを仕掛けた」と要約する。
最後に北川氏は「(地域再生のための)次の手を打ってきている。アート制作だけではない活動が恒常的に行われつつある。16年10月に発生した中越地震では、外部から訪れていた100人の人々が、この地に存在した。例えば生態学を研究する里山学会の大会を開くための準備作業などでだ。妻有を学問・文化の地としても再生できればいいと考えている」と将来への思いを語った。
【記者メモ】
聞きしに勝る感動。東京23区より広い760平方qという広大な中山間地を車で経巡ると突然、現代アートにめぐり会う。作品に仕掛けられた罠(わな)。引っかかった後の快感。結果としてわき起こる里山への愛着。どれも大地の芸術祭での体験だ。
総合ディレクターの北川フラム氏は「日本文化の根である里山を芸術家は美しく見せることができる。作品の制作課程で行われる作家と村人の協働作業が妻有の再生につながる」と話す。
いにしえより日本人が労働・生活の場所、文化の地として形成してきた里山に、現代アートという、まったく異質な、新たな文化を埋め込んだ。コラボレーションが実にうまくいった。もちろん北川氏が「1つ1つが悪戦苦闘の連続」という準備作業の積み重ねがあってのものだ。埋め込まれた新たな文化が、世界各国から参加している一流芸術家によるもの、という点も見逃せない。効率性一辺倒の時代に、最も非効率な存在である里山とアートが出会い、お互いの再生を試みている。文化を切り口とした地域再生の可能性が、ここに見える。
投稿者 machizukuri : 更新日2006年09月05日
