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2006年09月15日 第116号
特集 愛ある者は金を出す まちづくり資金集め講座
まちづくりを考える上で、つねに課題となるのが活動のための資金調達だ。行政の補助金に頼ることができた時代ならまだしも、国と地方が1000兆円もの借金を抱える中では、いくら大義名分を掲げてみても、簡単に「金」は落ちてこない。しかし、世の中には金に困る人もいれば、余裕がある人もいる。お金を使いたくてウズウズしている人、多少リスクを負っても共感できる事業には投資する人……。こうした資金をまちづくり活動に取り込めないか?今号では、全国で始まっている地域活性化のための資金調達の事例を紹介する。
その1 グリーンシート 文化を守る零細企業が5400万円を調達
岩手県東和町(現花巻市)に日本ホームスパンという会社がある。従業員23人、50年の歴史を持つ老舗企業だ。
社名のホームスパンとは、羊の毛を紡ぐ仕事のこと(家=HOMEで、羊毛を紡ぐ=SPUNの意)。もともと英国スコットランドの伝統的な生地生産の技法だったが、日露戦争をきっかけに、防寒対策としてその技術が国内にも移入された。
明治後半からは、岩手県や北海道、長野県で羊の飼育が奨励され、同時に国産の生地生産が始まった。しかし、第二次世界大戦以降は機械化や後継者不足の影響で、岩手県を残し、他の産地は消滅してしまった。本場イギリスでも産業革命後の機械化により、手作業のホームスパンは個人の染織作家が作る工芸品ぐらいになっているという。
そんな中で、昔ながらの伝統文化を受け継いでいるのが同社だ。その技術は国外からも定評があり、平成14年には、世界的なブランド「シャネル」との取り引きを開始した。
しかし、経営状況は厳しい。バブル崩壊後、国外製品との価格競争が激化する一方、人件費は上がり続け、売り上げが伸びても利益が出せない状況が続く。
年商は1億6000万円で、ここ数年で25%も伸びたが、赤字はなかなか解消されない。
希望の光であるシャネルとの取り引きを拡大するには、工場の設備増強が不可欠で、そのための資金調達が必要となった。当時、銀行からの融資は期待薄。そんな中、同社が目をつけたのがグリーンシートと呼ばれる株式市場だった。
その2 寄付市場 2000人の村が1500万円を集めた
返済不要。自治体に夢の財源
長野県泰阜村1500万円、北海道沼田町520万円、同羅臼町1600万円……。これらは自治体に集まった一般市民からの寄付金の額だ。過疎化など人口減少による税収の落ち込みに加え、交付税の削減と、ダブルパンチに頭を抱える自治体にとっては「返済不要」の夢のようなお金である。この自治体への寄付市場が、にわかに活気づいている。仕掛け人は、NPO法人寄付市場創造協会の渡辺清会長。同会では、全国の自治体に対し「寄付による投票条例」をつくるよう呼びかけている。これまでに10市町村が条例を制定。今後、小規模自治体ばかりでなく、各地で導入はますます加速しそうだ。
その3 全国事例 市民ファンド、マッチングファンド、不動産証券化、市民公募債…
全国各地で、市民出資を取り入れたまちづくり活動が始まっている。元祖とも言えるのがNPO法人北海道グリーンファンドの市民風車だ。環境に配慮した風車の建設にあたり、必要な資金調達に市民からの出資を取り入れた。出資してくれた市民に対しては、風車が作り出した電力を売電することにより、銀行の利回りよりはるかに高い2・4%利率で出資金を返済していく。
京町家の保存や、首都圏の中心市街地にあるビルの再生には、不動産証券化という手法が取り入れられ始めている。こちらも、再生後の施設の運用により、出資者に対して高い利回りを想定する。
一方、返済などは想定せず、必要な事業のために市民や行政、NPOが資金を出し合う「マッチングファンド」という事例も出ている。
行政主導では、特定の事業に対する市民公募債の活用も活発化している。
その4 企業の社会貢献 泣く子も黙る!経団連が1500億円を支出
社団法人日本経済団体連合会の社会貢献推進委員会・1%クラブは、会員企業らを対象に、経常利益や可処分所得の1%相当額以上を自主的に社会貢献活動に支出することを推進している。
この1%クラブは、経団連が欧米企業の社会貢献活動などを参考に1990年に設立したもの。現在、265社、個人会員1050名が加入する。
ちなみに、同クラブが経団連の会員を対象に行った社会貢献活動の実績調査(2004年度、1390社対象)では、社会貢献活動の支出総額は年間1508億円(うち61億円が災害被災地支援)、1社平均が実に3億5100万円にもなった。
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グリーンシートって何だ?
戦後、地域を救った企業だから 240人が株主になった
グリーンシートとは、日本証券業協会が平成9年に開設した新たな証券市場のこと。日本の株式市場には、証券取引法上の市場として、東京証券取引所や大阪証券取引所、ジャスダック(店頭)などがある。これらに上場しない企業を対象とした未上場企業向けの証券市場がグリーンシートだ。
一般に、証券市場へ上場するには、利益、時下総額、株主資本などの数値基準をクリアしなくてはならない。コストも最低で登録時に5000万円程度、その後の上場維持に3000万円〜4000万円が必要とされる。
これに対してグリーンシートは、公開のための形式的な数値基準はなく、一般的に時価総額が2〜3億円規模でも上場できる。経費も公開示が750万円〜、その後の維持が年間500万円〜と、中小企業にとっては取り組みやすい内容となっている。
公開にあたっては、代表取扱証券会社=主幹事証券会社が対象となる企業の「社会性」「成長性」「事業のリスク」などを審査し、これらをクリアした上で、ディスクロージャー(情報の開示)することが義務付けられる。そのため、株主にとっても安心して購入してもらえることが特長だ。
知人や顧客が応援団に
日本ホームスパンは、どうやって5000万円を超える資金を集めたのか?
菊池完之社長は「知り合いや顧客、地域の人たちに呼びかけ理解を得た結果240人が株主になってくれた」と振り返る。
そのほとんどは、株式投資とは無縁だった人達だ。地域の伝統を守る同社の必要性を感じた人々が、株主となることで、同社を応援したのだ。
同社の創業は昭和36年。設立の背景には地域の歴史が大きく関わっている。
岩手県東和町では、明治後期から羊の飼育が奨励され、さらに輸入羊毛による生地生産が農家の副業として各家庭で行われていた。が、第二次世界大戦中は、羊毛が軍需物資とされ、各家庭での羊毛加工は固く禁じられ、家庭で羊の毛を紡ぐ「ホームスパン」の技術は、地域から消滅してしまう。
終戦後、服役を終えた軍人が故郷にもどってきても、地域には何の産業もない。そんな中で、東和町の旧軍需物資の倉庫に大量の羊毛が保管されていたことから、地域に産業・雇用を生み出そうと地域が一体となって、羊毛加工の会社を設立した。これが日本ホームスパンの前身にあたる河東ホームスパンだ。河東ホームスパンはその後、倒産してしまうが、先人達の思いを引き継ぐ形で、日本ホームスパンが誕生した。
40年近く前から、同社に勤めている小菅まさ子さん(63)は「この会社は、お寺さんと同じように、昔から地域の中で育ってきました。ですから、どんな時代になっても、住民の心の中から無くなることがないものなのですよ」と話す。
菊池社長は「グリーンシートで集めさせていただいた資金は、何らかの形で利回りが出せるように経営改善をしたい」と語る。季節ごとに生産のムラをつくらない体制を確立し、海外取引の幅を広げていくのが当面の課題だ。
そして、その先には、東証マザーズなどへの上場も視野に入れる。
「グリーンシートへの公開にはそれだけ費用もかかっています。これに甘んじるのではなく、投資していただいた皆様のためにも成長企業を目指したい」(菊池社長)。
18年7月現在、グリーンシートに登録されている企業は89銘柄ある。中には10億円を超える資金調達を実現した会社もある。
グリーンシートは日本経済の起爆剤になる
インタビュー
ディー・ブレイン証券 出縄良人社長インタビュー
※本紙にて大反響
投稿者 machizukuri : 更新日2006年09月15日
