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2006年10月25日 第120号

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REPORT 「非営利型」株式会社が街を変えた!
指定管理者制度を使わず行政施設を再生

 東京都千代田区に、指定管理者制度の導入前から、公的施設を民間が運営して著しい効果をあげている事例がある。旧・千代田区中小企業センタービルを改修して誕生した「ちよだプラットフォームスクウェア」がそれだ。運営するのは、「非営利型株式会社」という新しい概念形態を持つ民間企業。利益は追求するが、事業で得た利益を株主へ配当するのではなく、新たなまちづくりへ投資する。そのことによって、年間1億円以上もの赤字を出していた公的施設が年間1000万円の新たな投資を生み出す地域の拠点に再生され、結果、「空きビル対策」という行政が長年抱えていた課題をも解決する動きに発展している。

TOPICS パブリックビジネス研究会が提言
指定管理料の一方的削減などを問題視

PPP(官民パートナーシップ)における企業の新たなビジネスチャンスを模索するパブリックビジネス研究会(事務局・三菱総合研究所)は 指定管理者制度のさらなる充実に向け、自治体が予算不足などを理由に指定管理料の減額を求めることがないよう、あらかじめ必要な予算措置を講じた上で公募することなど、同制度について20項目にわたる提言をまとめた。
 同会会員らが運営実務を通じ直面した問題点を踏まえ、行政側に改善を求めたもので、官民が対等な立場で協定を結ぶ本来の指定管理者制度の姿とは程遠い現状が明らかになった。

INTERVIEW 都市再生本部 澤井英一局長に聞く
小泉内閣『都市再生』の成果は? 

 小泉内閣が国家的な重要課題に位置付けて取り組んだ都市再生。大都市偏重の政策と受け止められることもあったが、その全国にわたる成果にはあまり目が向けられていない。確かに当初は、大都市圏を対象としたプロジェクトが目立った。が、「稚内から石垣まで」をテーマとする全国都市再生モデル調査事業では、地方の個性を生かしたまちづくりが、全国各地で芽吹いた。そして、それらを支援するために、政府は、「担い手支援」という大きな方針を打ち出した。都市再生がもたらしたものは何か、これからのまちづくりのポイントは?内閣・都市再生本部の澤井英一事務局長に聞いた。

NEWS 関西大学が産学官連携で福祉マップ作成
高校生の車イス体験をWebデータに

 関西大学(大阪府吹田市)は大阪府立八尾高校生の車イス体験からバリアフリーマップの作成を支援し、産学官連携による地域社会への循環を試みている。高校生が実習で集めた情報を、web版の福祉マップとして活用することで、高校生にとっては社会に貢献した実感ができるという。

シリーズ CSR・SRIで地域再生
最後の清流・四万十川流域の山林を守れ

 「最後の清流」と呼ばれる四万十川。美しい流れを生み出す流域の山林を守ろうと、高知県西部の四万十町(今年3月に大正町など3町村が合併して誕生)では、企業と地域の協働による森林づくりが始まっている。紙製品や家具を生産するコクヨ鰍ェ昨年で創業100周年を迎え、あらたな100年のスタートにあたり、四万十町・旧大正町エリアの森林組合とともに「コクヨ―四万十・結(ゆい)の森プロジェクト」を始めた。「紙をつくるのも、家具をつくるのも林業があって成り立つもの―」。単に、森林整備にお金を出したり、社員をボランティアとして山づくりに参加させるのではなく、人工林の持つ本来の意味を認識し、将来、地域に経済効果をもたらす山林づくりを進めるという。

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「非営利型」株式会社が街を変えた!

指定管理者制度を使わず1億円赤字の行政施設を再生

 公の施設の運営を、公共団体などに限らず広く民間に開放する「指定管理者制度」が本格的に導入され、民間企業らによる公の施設の運営が全国各地で始まっている。PPP(官民パートナーシップ)の新たな一歩として注目される一方で、民間企業からは「自治体の予算不足を理由に、指定管理料を一方的に減額された」など、早くも不満の声が出始めている。対等な立場を意味するパートナーシップとは程遠く民間を下請け業者のように位置付けている自治体の姿も垣間見えるのが実情だ。
 一方、自治体の立場からすれば、公共性が重視される施設に営利を目的とする民間企業を参入させることには、まだまだ不安が残る。究極の課題は、こうした互いの不安を払拭した真の信頼関係の構築だ。

 東京都千代田区には、指定管理者制度の導入前から、公的施設を民間が運営して著しい効果をあげている事例がある。旧・千代田区中小企業センタービルを改修して誕生した「ちよだプラットフォームスクウェア」がそれだ。運営するのは、「非営利型株式会社」という新しい概念形態を持つ民間企業。利益は追求するが、事業で得た利益を株主へ配当するのではなく、新たなまちづくりへ投資する。そのことによって、年間1億円以上もの赤字を出していた公的施設が年間1000万円の新たな投資を生み出す地域の拠点に再生され、結果、「空きビル対策」という行政が長年抱えていた課題をも解決する動きに発展している。

 千代田区では、バブルに沸く80年代、神田周辺にオフィスブームにのって数多くの中小ビルが建てられた。しかし、バブル崩壊後、不動産に依拠していたまちの経済は一気に沈滞化。加えて、六本木、汐留など新たに開発された大型ビルへとテナントが大移動する「2003年問題」で、空きビル問題が浮上した。
 対策として、区ではSOHOに着目(SOHOとは、スモールオフィス・ホームオフィスの略で、ITを活用して事業活動を行っている10人以下の事業者のこと。クリエイターやデザイナー、在宅ワークなどがそれにあたる)。
 財団法人まちづくり推進公社(現・まちみらい千代田)らが中心となって「SOHOまちづくり構想」を平成12年に打ち出した。
 その内容は、江戸時代に地主に代わって長屋などを管理した家主=「家守」の機能を取り入れ、ビルの空室や空きオフィスを店子(たなこ)であるSOHO事業者とマッチングさせようというもの。
 その成果の1つがプラットフォームスクゥエアだ。

社会貢献に出資する株主もいる
1・5億を資金調達

 千代田区まちづくり推進公社では平成16年2月に、神田錦町の旧・千代田区中小企業センタービル(地上5階、地下2階)を再生するにあたり、SOHO育成の拠点施設にすることなどを要件に運営事業者を募集した。かつての中小企業センターは、会議室や展示場などに利用されていたが、稼働率は低く、年間1億円以上の赤字を生み出す施設だった。
 選定されたプラットフォームサービス梶i代表取締役=藤倉潤一郎)は、このプロジェクトのために設立された企業。同社では、中小企業センターの活性化だけではなく、周辺の中小ビルも連携させながら地域全体を活性化させるプロジェクトを提案した。その上で、営利を目的としない「非営利型株式会社」という概念形態をとることを宣言した。
 非営利型株式会社の定義は「営利を目的とするのが通常の概念である株式会社でも、利益を株主へ配当するのではなく、社会事業のために使う」ということ。
 非営利型株式会社とした理由について藤倉社長は「公的施設を借りて公に資する事業を行う際に、株主と意識を共存できる土台を築く必要があったから」と説明する。
 「何か問題が生じたときに何を優先するのか―。コストを切り詰めて利益を出すのか、あるいは利用者のことを最優先で考えるのか、判断のよりどころを明確にする上でも非営利型と謳った効果は大きい」(藤倉社長)。
 当初はNPO法人も検討したようだが、中小企業センタービルの再生にあたっては、新たなサービスにかかわる改修は民間企業の責任で行うことが条件とされ、改修の資金調達をするために、NPOではなく株式会社の方が有利と判断した。
 配当が出なくても株主になってくれる出資者はいるのか――。こんな不安を抱えながらも、結果として16人の出資者により1750万円の資金が集まった。地域でまちづくり活動を展開している経営者、ベンチャー支援を手がけている税理士…。
 株主は、配当ではなく事業の成果を期待する。言い換えれば、事業が本当に住民益になっているかを第3者的な視点から監視する役割を担っている。こうした関係により、ちよだプラットフォームスクウェアは、民間企業ながら、公共性を損なわない運営を実現させていると言える。
 年商は2億円。そのうち、まちづくりの新たな投資へ回す利益は1000万円にのぼる。

コミュニティーファンドも

 資金調達の流れを補足すると、まず藤倉社長を含むコアメンバー4人が資本金1750万円を出している。そこに、16人の新たな株主が1750万円を出資したことで、合計3500万円の資本金ができた。
 しかし、改修に必要とされた費用は4億円。このうち2億5000万円は区が持つことになったが、1億5000万円は独自に集めなくてはならなかった。そこで、金融機関との交渉と、投資事業組合による地域ファンドの募集を行った。
 結果、金融機関からは地元金融機関、政策投資銀行など3行で7500万円が集まり、地域ファンドには、千代田区在住の個人ら30人から3500万円が寄せられた。ファンドへの出資者は株主のような議決権は無く、あくまで事業のために自己資金を貸している立場(金利相当の配当は期待できる)。自分たちのお金が、目に見えるところで、地域の役に立っていることが実感できることに共感してくれた人々が出資者になってくれたという。

家守で空きビル解消

 ビルの再生にあたっては、SOHO事業者を施設に迎え入れるだけではなく、SOHOの支援機関(エージェント)にも、より多く入居してもらうことをプロジェクトの重点に置く。
 エージェントが「現代版家守」の役割を担うことで、旧中小企業センターだけでなく、周辺の空きビルをSOHO事業者に対して仕事の場として紹介できるし、ビジネスマッチングも支援できるからだ。

指定管理者制度なら使用目的が限られる

 行政財産である旧・中小企業センターを民間が運営するためには、法的な課題もあった。
 当時はまだ指定管理者制度が導入される前。そのため、施設条例を廃止し、行政財産を普通財産に変更した上で、定期建物賃貸借契約によって運営を民間に任せる方法がとられた。
 しかし、藤倉社長は結果的に指定管理者制度を活用しなくてよかったとも考えている。その理由は「指定管理者だと、行政財産として施設用途が定められているため、実際の事業範囲が狭くなる恐れがある」からだ。
 旧・中小企業センタービルの場合、施設の利用目的は、「産業振興」というものだった。当然、プラットフォームサービス鰍フ提案は、SOHO事業者の支援という面では、産業振興に合致しており、問題はない。が、同社ではそれ以外にも、NPOの支援やまちづくり団体の支援、地域コミュニティの再生など、幅広い活用方法を想定したいたため、こうした提案が制限されたかもしれないとする。

生まれ変わった公共施設

 現在、中小企業センター「ちよだプラットフォームスクウェア」には、11機関のエージェントが入り、それぞれが得意分野を生かし、SOHO事業者の育成を支援している。
 1階は商談などに使えるオープンカフェ。無線LANを使ってノートパソコンで事業説明をする起業家の姿もある。夜はバーとしても利用でき、打ち合わせ後の懇親会の場としても使われている。もちろん一般市民も活用することが可能だ。こうした交流の中から、新しいビジネスが生み出される。
 2階は、800uのフロアを40席ほどに細かく区切って、個人に貸し出しているオープンネスト(ネストは巣の意味)。130人が登録し、それぞれが、利用したい時間に、空いている机を使って仕事をしている。賃料は月額1万9000円。必要に応じて電話や郵便物の受け付け、取り次ぎ代行などのサービスも受けられる。その隣にエージェントのオフィスがある。
 3階は、数人のユニットで働ける、ボードで区切ったクローズドネストと呼ばれる占有スペース。35室あるが、すべて埋まって、常に入居待ちが出ている状況だ。利用料金は1u1万円。広さは8uから最大20u程度までが用意されている。
 予約制の会議室や、集中して機密プロジェクトが進められるプロジェクトルーム、コミュニケーションスペース、リフレッシュルームなど共有空間もふんだんにある。「小さく借りて、大きく使える」というのが特長だ。
 利用者の多くはプランナーやナレッジワーカー(知識労働者)、ベンチャー企業。事業者同氏の出会いの中から、共同プロジェクトに発展したケースもあるという。
 周辺の空きビルを活用した新しいビジネスモデルも生まれている。今年4月には、第1号のSOHOインキュベーション施設が誕生した。11月には、第2号が生まれる。
 こうした事業者が、今度はそのビルの「家守」となっていけば、周辺一体の空きビル対策も一層加速すると藤倉社長は考えている。
 藤倉社長は「このエリアは歴史的に職人街として開発された地区。今後も職人の街として開発していくことが土地のDNAともあっている。現代版の職人と言えるプランナーやデザイナーなどSOHO事業者が出世していける街にしたい」と話している。

投稿者 machizukuri : 更新日2006年10月25日

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