2007年02月25日 第132号
「起業家精神」が子どもを育てる!
‘佐賀モデル’小学生から社会人までの一貫した教育
「お金を稼ぐことの大変さがわかりました。これからはもっと大切におこづかいを使いたいと思いました」―。佐賀県佐賀市にあるNPO法人・鳳雛(ほうすう)塾のキャリア(仕事体験)教育を受けた小学生の言葉だ。
平成11年に任意組織として発足した鳳雛塾は九州初の民間ビジネス(実務を教える)スクールを展開してきた。社会人・大学生向けの起業家育成を行い、10期を経て280人の卒塾生を輩出、その中から14件のビジネスが誕生している。
平成14年からは先に示した小学生向けのキャリア教育をスタート。地元商店街などを舞台に子どもが販売実践を行う教育プログラム「キッズマート」を実施してきている。小学生の言葉に象徴されるように体験を経た子どもの成長に、学校、家庭、商店街など地域が目を見張っている。早い段階での社会人教育が地域の担い手づくりに貢献している。鳳雛塾は学校に対する教育支援をサービスとして行っている。佐賀市教育委員会などとの共催で、塾はコーディネート役、具体的指導は教員が担当する。平成17年にNPO法人化した同塾は、これまでの実践による蓄積をカリキュラム(教育課程)と教材という形にし、19年度以降、全国への販売を考えている。ビジネスとしての成立を目指すのだ。
佐賀から始まった産官学連携による新たな教育へのアプローチ、結果としての地域活性化への試みにスポットを当てる。
地域経営の効率的な手法とは? CSR(企業の社会的責任)の考え方を生かせ!
内閣府とまちづくり新聞は1月31日、都内で第16回地域再生まちづくり勉強会を開催した。当日は、元鞄d通社員で地域経営コンサルタントの丹野実氏が「地域経営の効率化を図るコミュニケーションパワーの活用」というテーマで講演した。その内容から。
地域経営とは何か?「地域価値の向上と再生産を目指した活動のプロセス」と定義付けている。持続可能な地域経済の発展、安全・安心な地域社会の実現、多様な地域文化の育成と継承、を目標としたい。収入増(売上アップ)と、支出減(コスト削減)をバランスよく実現することが経営の基本。その上に現在、企業経営ではCSR(企業の社会的責任)が求められている。売上だけではなく、社会・環境に対する責任も要求されている。地域経営も同じことだ。
富山市、青森市に続け! ポイントは、過去・現状分析に基づく計画、地域の熱意
まちづくり3法見直しを受け国は「選択と集中」で中心市街地活性化を支援する。条件は、国による基本計画(地方自治体が作成する)の認定。内閣官房中心市街地活性化本部事務局(以下、中活本部)の嘉村潤・参事官に、計画認定上のポイントなどについてインタビューした。
―「中心市街地活性化」(以下、中活)への地域の取り組み状況から、お話願いたい。
18年12月20日、富山市、同年12月22日、青森市が、それぞれ作成した基本計画を国へ申請、19年2月8日、両市の計画は認定された。(中活本部に)相談にきている自治体は富山・青森市以外に30ほどある。人口規模を見ると1万人以下から、100万人以上まで様々だ。
中心市街地活性化基本計画の作成手法
青森市のノウハウを生かせ!
青森市都市整備部の山田進次長と青森商工会議所の中村隆昭新幹線・まちづくり対策部長は「青森市中心市街地活性化基本計画の策定について」というテーマで講演した。日本商工会議所と法政大学が共催で1月26日、東京都内で開催したまちづくり公開セミナーから。
【青森市、山田進次長】
これまでの取り組みを踏まえ中心市街地活性化基本計画を作成、国へ18年12月22日に申請した(2月8日認可)。テーマは旧法(平成10年7月施行の中心市街地整備改善活性化法)上の基本計画と同じで、歩いて暮らすことのできる質の高い生活空間「ウォーカブルタウン(歩きたくなる街の意)の創造」。
対象エリアは116ha(旧法上の計画と同じ)。目標期間は平成23年まで。@街の楽しみづくりA交流街づくりB街ぐらしC商業の活性化―の4点を活性化の目標に定めた。
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280人の卒塾生、14件のビジネスが誕生
NPO法人・鳳雛塾の取り組み(佐賀県)
社会人・大学生向けのビジネススクールを展開してきた鳳雛塾は平成14年から小学生向けのキャリア教育を始めた。以前から投げ掛けてあった佐賀市からの要請が背景にあった。「キッズマート」という販売実践教育プログラムは、商売の基本学習から始まり、地域とのつながりなどを体験できるものになっている(図)。1クラス8人程度が1グループになり、市場調査から始め、店の商品内容を定め、具体的に決められた金額内で商品を仕入れる。金額は上限1万5000円程度とし銀行からの借り入れを想定。そして、販売価格を決め、(地元マスコミの協力を得て)広報活動をし、商店街などで出店を3時間程度開く。1日3時間だけの体験のために約半年間かけ準備をする。商店街・マスコミ・企業などとの調整を自ら行うことで、社会を実体験し起業家精神を養いながら、人間としての基礎的な力を身に付けるのだ。
苦しい組織運営
20年度以降、教育プログラムを全国へ販売
NPO法人鳳雛塾の横尾敏史事務局長(佐賀銀行から出向)は説明する。「1万5000円を使い利益は5000円程度になる。8人で分ければ1人500円余にしかならない。その結果、家で500円のおこづかいをもらい、すぐゲームなどに使ってしまっていた子どもの価値観が変わる。おかあさんと買い物に行き商品の値段を注意するようになる。算数・理科などを教えられない、おとうさんが社会についての先生になれる。家庭内が融和され、その上、あいさつがしっかりできるようになるなど、マナーが良くなる。社会とのつながりを体験して初めて人間力が身につく」
この取り組みを経済産業省九州経済産業局が評価。鳳雛塾は同局の事業(高等学校における起業家教育普及事業)を導入して平成16年度から高校生を対象としたキャリア教育も始めた。高校生はニーズ調査を経た新商品開発までを行う。平成17年度からは経産省が始めた「地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト」(※)を受託、中学生も加え(中学生は地元企業の職場体験)、小・中・高校生を対象とした事業として展開している。「プロジェクト」を契機に鳳雛塾は17年6月にNPO法人化、NPOとして委託を受けた。事業期間は19年度までの3カ年。
事業の中で鳳雛塾は、佐賀モデルを全国展開できるように、カリキュラム・教材の作成を進めつつある。事業費は17年度1200万円、18年度1250万円(19年度は申請準備中)。人件費、映像教材などの作成費などに活用している。
横尾事務局長は「NPOスタッフは私と、もう1人の2人。私の人件費は銀行から出ている。教材作成のための専門である、もう1人の人件費は国からの委託費で賄っている。小・中・高校生向けのキャリア教育は完全なサービス。厳しい財政状況にあるということで学校から対価はいただいていない。佐賀県・市からの一部補助金はあるものの、基本的な運営費は賛助会員である企業に見てもらっている。国の受託事業が終わる20年度以降は、教育プログラムを全国へ販売することなどにより収入を得たい」と述べ、苦しい実情を打ち明ける。
横尾局長は「学校などから、どんどんオファー(依頼)が来るが、組織が脆弱で対応しきれない。まずは資金面でクリアすることが1番。もともと支援していただいていた6団体も含め現在9社・団体が賛助会員。当面は会員を増やすことがテーマだ」と課題について語る。
「地域自律・民間活用型キャリア教育プロジェクト」
経済産業省が17年度創設。19年度までの3カ年事業。地域に根ざしたキャリア(仕事体験)教育の推進をテーマとする。学校と企業を結ぶ鳳雛塾のような民間コーディネーターを事業委託対象とする。全国でモデルを17年度(予算3・4億円)25カ所、18年度(同4・4億円)29カ所、それぞれ選出。19年度(予算4億円)は未定で、これから選出する。
産官学連携で寄付講座開設 一般向けのビジネススクールも
キャリア教育の受講生は2000人以上に
平成7年、佐賀県、佐賀大学、佐賀銀行各代表の意見交換の中からベンチャー起業支援の話が起こる。具体的に3者が資金を捻出し寄付講座を開設することになった。最終的に9900万円が集まった。寄付講座は大学生向け。
産業界など一般向けにも勉強会を開こうと鳳雛塾の前身である平成弘道館(弘道館は佐賀藩校、ここから大隈重信などが輩出された)を開講する。直接国立大学への寄付ができないため運営は県からの寄付を受けるために設立されたSAGAベンチャービジネス協議会が担当。
事務局を佐賀銀行が受け持ち横尾さんが担当となった。平成11年、横尾さんが知り合い意気投合した飯盛(いさがい)義徳さんを寄付講座の講師に迎えた(当時、佐賀大学客員助教授)。同時に飯盛氏の協力を得て、弘道館を鳳雛塾に組織を改め、一般向けのビジネススクールとしてスタートする。
いまはNPO法人鳳雛塾副理事長で慶応大学環境情報学部専任講師の立場にある飯盛氏は同大学ビジネススクールを卒業し民間ベースの組織(ビジネススクール)をつくりたいと考えていた。鳳雛塾は飯盛氏の考え方を取り入れ、ケースメソッド(実際ある企業事例)をもとに生徒がディスカッションしながら学んでいく形をとっている。
立ち上げからの運営費は協議会の構成母体である6団体からの出資で賄うことに。6団体は、佐賀銀行、佐賀ベンチャーキャピタル(佐賀銀行の関連会社)、�佐賀県地域産業支援センター、佐賀県商工会連合会、佐賀県商工会議所連合会、佐賀県中小企業団体中央会。1団体から毎年5万円ずつ、合計30万円を受け取っている。
ベンチャービジネス協議会を発展させNPO法人鳳雛塾となった現在は、ここに会員企業からの賛助会費と個人会員会費が加わる。同塾は現在11期目で20人の塾生を抱える。10期目までの卒塾生は280人。ここから誕生したビジネスは14件にもなるという(表)。地域への産業・雇用創出の役割も担っているのだ。
9900万円の寄付により始まった佐賀大学内の講座は5年間で終了。しかし鳳雛塾は、社会人・大学生向けのビジネススクールと、小・中・高校生向けのキャリア教育を続け、全国的な注目を集めるようになっている。同教育を受けた小・中・高校生は、これまで延べ2371人にもなる(小学生970人、中学生958人、高校生443人)。
NPOの横尾事務局長は「佐賀県には『もやい』という言葉がある。みんなで協力し合う意味。そのDNAが鳳雛塾に生かされている。こうした取り組みが評価され2003年日経地域情報化大賞を受けることができた。受賞者の交流の中から富山市や(神奈川県)藤沢市へも同じキャリア教育の仕組みが広がることになった。鳳雛塾の活動は第1ステージが、社会人向けなどのビジネススクール。第2ステージが小・中・高校生向けのキャリア教育。現在、主体となる活動は、この2つだ」と経緯を述べ「学校と産業・企業をつなげ起業家精神をキーワードにキャリア教育などを実践してきた。子ども達を育てたいという思いが原動力。結果として地域の担い手となる子どもが成長し喜ばれている。小学生から社会人までの一貫した起業家(精神の養成)教育をしているのは、ここだけではないか。これが佐賀モデルだ」と締めくくった。
投稿者 machizukuri : 更新日2007年02月25日
