投稿記事

« 久能石垣イチゴ狩りにおける通年型観光の事業の可能性 | メイン | 第136号 »

2007年04月03日 学校施設における地場の木材活用を目指して

...


学校施設における地場の木材活用を目指して〜中津市の教育施設事情〜

■中津市はどんなところ?
 中津市は、九州の大分県の西北端に位置し、北西は福岡県に接し、北東は周防灘に面しています。面積は491.09kuで、市域の約80%は山林原野が占め、山国川下流の平野部にまとまった農地が開けています。
 地理的・地勢的には以上の通りですが、慶應義塾を創設し、著書として「學問ノスヽメ」「西洋事情」「文明論之概略」など著した『福澤諭吉』の故郷と言った方が早いかも知れません。現在は「一万円札の人」としても知られているところです。
 さて、このような地勢を持ち、かつ、数多くの偉人を輩してきた中津市は、平成17年3月1日に隣接する3町1村と合併し、キャッチフレーズも『山国川の「水」と耶馬の「もり」のめぐみを受け、「ひと」が育ち、癒され、たゆみなく「もの」がうまれる、「ひとにやさしい」新しいまち"なかつ"』とし、魅力ある暮らしやすいまちづくりに向けた取り組みを進めているところです。今回は、その中でも中津市教育委員会の一つの
取り組み事例を紹介したいと思います。 

■市長の一言
 きっかけは、平成16年9月議会における新貝市長の一言でした。つまり、「今後、小学校の体育館の建設予定があるが、これを何とか県産材を使って建てていきたい。ただし、最近は材木を使う設計をできる方が少ないとかいろんな問題があるが、県産材の使用について十分考えていきたい。」と。この市長発言の背景には、市域の大部分を占める森林資源脆弱化への懸念がありました。林業従事者の減少、再造林放棄箇所の増加は全国的にも問題になってきているところですが、二酸化炭素排出抑制という環境面で優れた特性を持つ木材を活用し、循環させ、森林資源の保全を図ることは責務であり、それには公共施設における活用が有用であるという結論に至ったわけであります。
 学校施設は、これまで防災上の観点から不燃堅牢化が進められておりましたが、建築基準法等の規制の範囲内で、かつ、防火対策を十分に考慮の上、コスト面にも配慮しつつ、適材適所に木材利用を図るための研究を教育委員会に求めたものです。
 委員会では、この意向を受けて研究会構想を立ち上げ、まず、平成17年5月に「中津市木造校舎等研究会運営要綱」を定め、学識経験者や各種市内事業者団体(森林組合、木材協同組合、プレカット事業協同組合、建設業協会、技能士連合会、建築士会、建築設計事務所協会)に入会案内を行いました。
 そうして、各団体から推薦を受けた16名と事務局で、平成17年7月11日に第1回の「中津市木造校舎等研究会」を行い、その後第7回まで開催を数えています。

■研究会の役割
 研究会設置の目的
 校舎、体育館等の学校施設整備に当って、ゆとりと潤いのある環境の確保と中津市における森林資源の活用を促進し、また、今後の木造建築のニーズに対応すべく、技術向上を目指す市内業者の育成を図る。
 研究会の調査・研究課題として、
  @木材を活用した木造校舎等の建築方法等の研究に関すること
  A地元材の活用方法に関すること
  Bその他、学校施設整備における木材活用の促進に関すること−−
 の3点をあげ、その実施にあっては、民間事業者を主体に、学識経験者が助言を行い、事務局=役所は、その調整方を行うとしました。
 当初は、構造材として、鉄筋コンクリートと鉄骨を使った工法に慣れ親しんできた近年の経験から、市の本気度を訝る向きもありましたが、視察や講演会を行う中、体育館の小屋組みにも地場の製材が活用できそうだとの機運が業者側、特に設計士に生まれ、独自の研究グループ活動が活発になっていったことは正に行政側が意図し、期待したところでした。
   
sisatsu.jpg

■プロポーザル
 研究会活動とは別に、市は、建て替えを予定している鶴居小学校体育館について、設計業務に係るプロポーザルを実施することとし、平成18年11月に公募し、審査を経て平成19年1月にプロポーザルの特定を行いました。
 このプロポーザル方式とは、建築の設計に係る業務の設計者を選定する場合において、一定の条件を満足する候補者の中から、当該設計業務に係る実施体制、実施方針、プロジェクトに対する提案等に関するプロポーザル(提案書)の提出を受け、書類審査及びヒアリングを実施した上で評価を行い、当該設計業務に最も適した者を選定する方式で、最も優れた設計案を選ぶ設計競技(コンペ)方式に比べ簡便であり、発注者、設計者の双方が過大な労力を割かずに設計者の選定を進められる利点があります。
 もちろん、簡便さだけを求めたものでなく、発注者と特定者がコミュニケーションを重ねながら設計条件を練り上げ、具体的な設計作業を進めることを意図して、最も適切な創造力、技術力、経験などをもつ人(チーム)を選ぶこの方式を選択したところです。
 今回のプロポーザルの特徴は、まず、参加条件の中に代表者は中津市内に本社(所)を有する者とするなど地域力アップを視野に入れ、課題として木材の選定や架構及び接合部についての提案を求めたところにあります。
 特定者の提案は、木材使用について、適材適所を基本とし、地場流通材及び流通材寸を採用するなど有効活用の具体的方針が示されており、架構についても、特徴的な構造的システムの提案がなされており、在来工法による簡略・合理化された接合・仕口で、地元の伝統工法・技術を活かすことができる点などが評価されました。なお、特定者とは、平成19年度に鶴居小学校屋内運動場増改築に伴う基本・実施設計業務を委託する予定です。

■中津市の取り組みに対する外的支援
 これまでの中津市の取り組みへの評価がなされたものでしょうか、平成18年末に日本木材学会九州支部より、同学会の教育研修プログラムの一環としてシンポジウムを中津市で行いたいという申し出を受け、平成19年2月22日にに「地材地建を地力で推進」(副題:中津市での先進的取り組みの成功に必要なものは?)と題するシンポジウムが開催され、地域材であるスギ材の継続的利用の可能性をそれぞれ専門家に説明頂くとともに、その成功のポイントを議論して頂きました。
 当日は、市内事業者に止まらず長野県や三重県、兵庫県といった県外からの参加者もありました。
■本番はこれから
 以上が、これまでの中津市教育委員会の取り組み状況ですが、まだ緒についたばかりで、本番はこれからであり、今後の中津市の教育施設に対する木材使用の継続化に向けた取り組みを具体的に進めてまいらなければなりません。
 最終的に目指すところは、「中津で産出した木を、中津で加工し、中津で流通される資材器具を使い、中津の技術者で建築可能な木造体育館を低コストで実現する」ことです。

平成19年 3月17日

中津市教育委員会管理課 黒永俊弘

投稿者 machizukuri : 更新日2007年04月03日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメント

コメントしてください




保存しますか?