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2007年04月02日 久能石垣イチゴ狩りにおける通年型観光の事業の可能性
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1、はじめに ---産学共同研究事業の目的---
本稿では、著者が関わった産学共同研究事業---「久能石垣イチゴ狩りにおける通年型観光の事業可能性調査」(財団法人静岡産業振興協会から委託、委託期間:平成18 年8月1日〜平成19 年2 月28 日)---についての報告を行う。
久能石垣イチゴ狩りは、静岡市の体験型農業観光の中でも、最も代表的な観光事業であり、市内外から多くの観光客が訪れている。このイチゴ狩りは、冬から春に限定されている観光事業であるので、この地域への観光客の訪れは、一年の内でも、わずかな期間である。
そのため、イチゴ狩りのシーズンを外れると、この地域での人通りは閑散となり、閑散期を利用して、観光農園では、次期のイチゴシーズンに対応すべく、夏から秋にかけて、イチゴ苗の生育作業を行っている。
このような時期限定での観光事業であっても、シーズンのオフ期には、イチゴの加工製品の販売等で、年間を通しての観光農園の収入は、比較的に安定と思われるが、しかしながら、それは、絶対的に安定した高収入とは言いがたい。かつ、限られた時期のみに観光客が集中することは、逆に言えば、シーズンオフ期の閑散期には、この地域の経済活性化が見込めないことになり、いわゆる、シャッター通り、と同じく、地域の元気力や躍動力が沈滞しがちである。現実に、この地域では、若い労働力の不足が目立ち始めており、農園主の多くは、中高年者である。
地域の経済活性化、元気力、躍動力を高めるためには、この地域に、大きな人口の流れを作り出す必要がある。そこで、昨今、体験型の観光事業が全国的なブームとなっているが、この方式を、現状のイチゴ狩りに取り入れ、つまり、晩夏から早秋にかけて農園主が行っている石垣イチゴ苗の定植を観光客に体験してもらい、かつ、イチゴ狩りのシーズンが終わりかけた晩春に、イチゴジャム作りをも体験できるような観光プログラムを企画して観光客に提供すれば、通年型のイチゴ狩りが実現でき、それは、一年を通じて、この地域に観光客が訪れるということにつながるので、この地域の、経済活性化、元気力、躍動力を高めることになるだろう。このような観光事業が成功すれば、ひいては、若い労働力の回帰や後継者問題の解消、などにつながるのではないだろうか。
以上の問題意識の下で、イチゴ狩りの通年型観光事業の可能性調査を、「いちごランドマサミ」の川島正巳農園主を代表として、袋井市の観光バス会社である「さくら交通」、および、著者の三者が共同して行った。
2、事業の概要
本事業では、体験モニターを、定植体験、イチゴ狩り、および、ジャム作りの一連のプログラムに招き、彼らへのアンケート調査を通して「生の声」を直接に聞くことで、通年型のイチゴ狩り観光の可能性調査を行うこととした。具体的なスケジュールについては、 9月の晩夏から早秋の時期に、静岡西部を中心として、30 名程度のモニターを受け入れ、実際に、川島農園で、イチゴ苗の定植体験を経験してもらう。そして、生育したころの、翌年の1 月に、再度、モニターとして招待し、イチゴの摘み取りとジャム作りを体験してもらう。その毎回ごとに、体験時の印象や感想、意見などを、アンケート形式で回答をしてもらい、これら2 回のモニターの回答を下に、イチゴ狩りの通年型観光事業は可能性があるかどうか、そして、可能性があるとすれば、さらに、どのような点に問題があるのか、解決すべき点はどこにあるのか、などを検証することにした。
3、調査結果
本稿では、紙面の都合上、第1 回のモニター誘致の調査結果についてのみ、紹介する。
平成18 年9 月23 日、計画通りに、第1 回のモニターの誘致が行われた。モニターの総数は、およそ40 名程度となった。ポットからイチゴ苗を引き抜き、石垣の穴に入れて、土を寄せて固定する定植は、モニターの方々にとっては、はじめてで、面白かった様子に思えた。定植体験後、続いて、苗植えの体験を行った。苗植えをしたイチゴは、自宅に持って帰ることができるので、イチゴの苗が、どのように実を結んでいくのかを、リアルタイムに観察ができる。また、自宅にもって帰った苗の生育と、次回の摘み取りに来た時に、自分たちが定植した苗とが、どの程度、成育に違いが出るのか、などを比較することも、この体験のねらいである。定植と苗植えの体験を行って、どのような印象や感覚、意見をもたれたのかについて、その回答の代表例は、以下の通りである。
・ 「子供が大変よろこんでいた。」(男性、60 代)
・ 「新たな発見、植えることの楽しさが分かった。 」(男性、30 代)
・ 「効率的な定植方法に感動した。」 (男性、50 代)
・ 「イチゴについての認識を深めた。」 (男性、50 代)
・ 「親子づれならさらに楽しめる。」 (女性、30 代)
・ 「達成感があった。 」(女性、40 代)
というように、どれも、今回の定植体験について、大きな感動と喜びを表す回答であっ
た。意見や要望としては、
・ 「育成方法を説明したシオリ等を配布してほしい。」 (男性、50 代)
・ 「メールでイチゴの育ち具合の写真を送ってほしい。 」(女性、30 代)
・ 「苗植え体験で、自宅に持って帰ったイチゴ苗のその後の育て方を時期的に教え
てもらいたい。質問したら、答えが、HP 上かメールで教えてもらいたい。」 (女性、40 代)
・ 「生育ニュースを写真つきでもらいたい。」 (女性、50 代)
というように、イチゴの生育についての要望が、とても多く寄せられた。ネットやメールでの配信、パンフレットの作成など、定植体験を実際に事業として行うに当たっては、このあたりのサービスを、かなり充実させる必要があることが感じ取られた。
また、さらに踏み込んだ意見としては、
・ 「(定植体験が、あまりにも簡単であったので)定植までの苦労が読み取れない。」
(男性、60 代)
・ 「他の果実でも、同様の計画を立てればいい。 」(男性、60 代)
と、言ったように、観光客は、お仕着せの体験ではなく、いわゆる、本物の体験、を、望んでいることが伺われ、さらに、発展的に、このような農業体験型の観光事業を広げてもらいたいという、モニターの側の知的好奇心を揺さぶった形となった。
4、まとめ ---可能性について---
結論としては、体験型農業観光に対しての潜在的なニーズは大きく、とても魅力的なものなので、観光客にも受け入れられるはずであり、この事業の可能性は十分にある、と思われる。かつ、事業を展開する上での技術的な運営についても、今回のモニターを通した実験で経験もした。本事業の代表者である川島氏も、「この事業が、来年度から本格的に実現すれば、地域の経済活性化、後継者問題などにも大きく寄与することになるだろうし、そのためにも、今回のモニター誘致で培ったノウハウを活かして行きたい」(静岡放送のテレビ取材)と、述べている。
著者としては、このような農業体験の観光は、ただ、地域の経済活性化に寄与するだけではなく、「命・いのち」ある植物を定植し、そして、その実を食するということで、自然学習というだけではなく、こころの教育、人倫教育、などにつながるだろうと考える。その意味では、このような農業体験型の観光は、小中学生の総合学習の一環として、道徳、社会化の授業の教材として活用をしていだきたいし、定植体験は、「食育」のひとつである食を自らが育てる楽しさの実感、勤労の尊さやありがたさの再認識にもつながるとも考えられる。また、高齢者のこころのケアーや生きがいの実現にも、活用をしていただきたい。いきいき・はつらつとして、元気に、健康に余生を過ごすためにも、屋外に出て、動植物に触れる、ということは、とてもすばらしく、効果的であろうと考える。そのためにも、車イスが入り込める、いわゆる、観光のバリアフリー、が実現されれば、なお、すばらしいことである。
地域への経済効果、という面で言えば、このような通年型の観光が実現すれば、少なくとも、年2 回、のリピーターが見込まれるし、5 月のジャム作りでリピーターということであれば、年3 回が見込まれる。つまり、地域への経済波及の機会が、年に、2 から3 回、ということになり、地域にとっては、好ましいことであろう。ただし、実際問題として、イチゴ狩りの体験型観光のみで、年に2 から3 回のリピーターが見込めるとは、少々、思えない。そこで、例えば、夏には、久能石垣イチゴの定植体験と三保真崎海岸でのマリンスポーツ、秋には、やはり、定植体験と久能山東照宮、日本平の散策を組み合わせるというように、広域的な観光プログラムを作成することも必要であろう。すなわち、伊豆周辺で行われているイチゴ狩りとの差別化を積極的に図ることで、久能周辺地域への経済波及が大きなものとなることが期待される。
新田時也
投稿者 machizukuri : 更新日2007年04月02日
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